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迷いもなく
「オトイにうちにこいといわれて、喰われなくてよかったな」
「へ!?あの、・・・・・・」
「アヤカシのような女だろう?まあ、喰うのは嘘だが、怒らせるとこわいのはたしかだ。オチョウも似た女になりそうだがなあ。 まあ、とにかく寺までゆこう。ここはまだ門前だしな」
男はあつめた枯葉を近くに掘った穴にほうきでおとしこむと、掃除をしていた道から奥まったところにある、両側を古く大きな石にはさまれた細い道へ足をむけた。
動きにまったく迷いがない。
ヒコイチが街でしりあった目の不自由なアンマなど、家の中ならいざしらず、外を歩くのに杖はかかせないと言っていたが・・・。
「ん?ああ、なあに、慣れよ、慣れ」
くちにだしたわけではないのに、ふりかえってわらってみせた男のあとを、しかたなくヒコイチも追うことにした。




