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ちりちり
設定ゆるふわ薄目でごらんください。 シリーズでつづけている『雰囲気だけ』もの。のうち、坊主のジョウカイがいるほうへ、ヒコイチがちょっとおじゃましました。
― 鞠 ―
ちりちり と小さくたよりない音がした気がして、ふりむいた。
丸くて目に鮮やかなものがころころと、ヒコイチめがけてやってきて、こつんと足にあたったから、ひろいあげてみた。
ちりちりちり
手にある鞠をふると、ちいさい鈴のような音がする。
「それ、あたしの」
いつのまにかむこうに、七つほどの女のこどもが立って、ヒコイチをにらむようにして両手をにぎりしめている。
「ああ、そうかい。なに、取りゃしねえよ」
ヒコイチはわらってみせ、鞠をかえそうとした。
だが、いつのまにか立っていたはずのこどもがいなくなり、「じゃあかえして」という声がうしろからきこえる。
おどろいてふりかえると、かわいい顔をおもいきりしかめた顔のこどもが両手をさしだしていた。
すこしだけ、首のうしろがぞわりとした。