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文学

秘境と折々

作者: 緋西 皐

光の柱建つ、あの楽園はとにかく目を引くためだろうか、煩く蠅のように騒いでいた。

やはりどの時代も数の優位性には従い、批判者は肩狭くして園の笑みを見上げるばかり。


どこまで暗がりに隠れたところで、暗がりとは太陽の対として存在するからだろう、光の柱は忌むものの瞳すら奪おうとして、秘境の傍らはより憎しんで寝ていた。


秘境の傍ら、その路はやはり暗く、構える折々も気怠げなのは路が暗い柱のように汚らわしく聳えるからだろう。

足音はすべからく哀しげに自身を消そうとし、また静まるたびに遠くの騒ぎが目立つようで、腹立たしくもあった。


それでも秘境は、哀しむ折々とは真逆に優雅であった。

危機感、切迫感、不安、不満、怒り、これらとは縁もない風貌でいたのだった。


道に人間が通る。

折々は怖い目をして、話しかけるなと睨みつけるばかり。

反して秘境は手招きして、「これも名物ですぞ」と甘やかすばかり。


秘境は話術に長けており、人間を様々な手口で安心させるものであるが、それは折々に対しても同じように接して、「人間様、どこから来らしたのですか」とは決して聞くことはない。

その答えが怖い目の理由だと察しているからである。


しかしながら残酷なことに折々は秘境の気遣いも知ることは無く、ただひたすらに恨み妬んでおりました、そしてその感情の分だけ疲れ果てて気づかずに眠るのです。


嫌いな園の道しるべの外れ、この秘境をよく見つけた、あの人間のほうが、あの光柱よりも希少であることも知らずに。



ある折々、その一つが言いました。

「あの光柱が目障りだ、あれが無ければ我らの輝きがわかる」と


そして同じような声は次第に大きくなり、楽園は穢され、地からは人間が消え失せたのでした。


まさか彼らは思いもしなかったことでしょう、嫌悪し、憎んだその光柱が、彼らのわずかなる存在を持たせていたことを。


「でも私は思うのです。そのような感情は自然でもあると」


それゆえだろう、秘境は秘境のまま優雅に過ごせるのだ。

鹿を愛でながら秘境は緩やかに風に漂っていた。

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