表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

16 宣言

 初等学校の後半、息子の担任は、立派な髭の老練な教師に代わった。


 髭の教師は、「子どもは風の子だ」といって、真冬も半袖半ズボンで子ども達と校庭で運動していた。


 それに感化された息子は、一年中半袖半ズボンで学校に通うようになった。


 ある凍えるような寒い冬の日、流石(さすが)に髭の教師は長袖長ズボンで登校してきた。子ども達も同じだったが、息子だけが半袖半ズボンで登校した。


 髭の教師は、「いくら風の子とはいえ、今日は長袖の方がいいぞ」と息子に心配そうに声を掛けたそうだ。


 しかし、息子はへっちゃらという顔で、半袖半ズボンのまま休憩時間に校庭に飛び出したそうだ。


 後に判明したことだが、息子は無意識に体を防御魔法で覆っていたらしい。


 そのため、長袖長ズボンを着ると、かえって暑くなるという現象が生じていたそうだ。



† † †



 初等学校の高学年になった息子は、勉強は苦手だったが、魔法鍵盤楽器の腕前は相当なものだった。


 学校の音楽会や発表会では、決まって息子が魔法鍵盤楽器で伴奏を頼まれていた。


 息子は、誰よりも友達思いで、友達から頼られる子どもに成長していた。


 私の気は弱いが優しい性格と、妻の勝ち気だが頼りになる性格のそれぞれ良い面を受け継いだようだった。


 困っている友達は絶対に見捨てず、他方、ダメなことはダメだとしっかり言う子どもになっていた。


 ただ、息子はとにかく「頑張らない」「努力しない」性格だった。


 試験は及第点が取れれば十分という感じで、それ以上の努力は、私や妻がどれだけ叱っても絶対にしなかった。


 魔法鍵盤楽器についても、音楽に詳しい妻が色々と教えていたが、自分の好きな楽曲以外はほとんど練習しなかった。


 練習するしないで、妻と息子はよく大喧嘩をしていた。それに私が加わり三つ巴の喧嘩になるということがしばしばあった。


 この頃が、息子の反抗期のピークだったようだ。今振り返れば笑い話だが、当時は中々大変だった。



† † †



 そんな息子が、初等学校の最高学年になったある日、私と妻に突然こう宣言した。


「僕、大人になったら学校の音楽の先生になる。だから、初等学校を卒業したら王立音楽学校に進学する」


 たまたま息子の授業を担当していた音楽の女性教師が、息子と大変気が合ったようで、音楽の先生の道を選択肢の一つとして考えてみてはどうかと話したらしい。


 息子も色々考えた結果、その道に進んでみたいと決めたようだった。


 王立音楽学校は、魔法学校の音楽版のようなもので、おおむね13歳から20歳までの者が音楽を専門的に学ぶ学校だ。


 当時、王国では王都に1校だけ設けられていた。


 学力はさほど必要とされなかったが、何よりも高い演奏能力、センスが求められた。


 私と妻は、「頑張らない」息子が果たしてそんな専門的な学校に進学し、やっていけるのか心配だったが、息子の意志は固く、学費も何とかなりそうだったので、挑戦を認めることにした。


 その夏、息子は「努力」と言うには程遠いものの、ちょっとだけ受験勉強や魔法鍵盤楽器の基礎練習をするようになった。私や妻にとっては、驚くべきことだった。


 そして、この夏は、もうひとつ驚くべきことがあった。驚きの程度は桁違いだが……


 それは魔王の出現だった。

続きは明日投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ