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14 特別治療室

 翌日、立ち上がってゆっくり歩けるようになった妻と私は、担当の医療系魔法使いに案内されて、結界が何重にも施された特別治療室に案内された。


 特別治療室の中では、様々な乳幼児が特別な立体魔法陣の中で保護され、治療を受けていた。


 痛々しい手術跡のある幼児、いくつもの管につながれた乳児。それでもなお、この子達が全力で生きようとしているのを感じた。それに応えるよう、医療系魔法使い達が忙しそうに働いていた。


「あちらが、お二人の赤ちゃんですよ」


 担当の医療系魔法使いが、特別治療室の一角にある立体魔法陣の前に私と妻を案内した。


 手のひらほどの小さな小さな赤ちゃんが、立体魔法陣の中で眠っていた。体は赤黒く、全身の体毛はやや濃いように思われた。


 担当の医療系魔法使いが説明してくれた。


「幸い、ギリギリ肺が出来上がっていたようで、立体魔法陣内の空気の濃度を高めることにより、自力呼吸が出来るようになってきました」


「赤黒い肌の色や濃い産毛は、もう少し成長すれば他の赤ちゃんと同じようになってきますよ」


「ただし、立体魔法陣内の空気の濃度を高めているため、目などに何らかの障害が残る可能性はあります。赤ちゃんの命を守るためです。そこはご理解ください」


 妻と私は無言で(うなず)いた。命を優先するためには、やむを得ないと思われた。


「赤ちゃんは生きようと必死に頑張っています。皆で応援してあげましょう」


 担当の医療系魔法使いが、笑顔で言った。私と妻も笑顔で頷いた。


 自分の病室に戻った妻と私は、息子の名を決めた。前から2人で考えていた名だ。


 その名は、妻と私の故郷の間に広がる森特有の木に由来するものだった。その木は邪を祓い、その木を材料にして作るお香は、人を朗らかな気持ちにさせると言われていた。


 その木のように、邪を祓い、皆を朗らかにさせる人に育って欲しい。そう願いを込めて名付けた。


 息子は、医療系魔法使いが奇跡的だと驚くほど順調に育った。首筋の横に原因不明の小さなアザが残ったものの、その他に大した障害は残らないだろうということだった。



† † †



 少し落ち着いたので、妻子のことを私や妻の両親にお願いして一旦王都に戻った私は、ベテランさんに改めてお礼を言った。


 ベテランさんは、わが事のように喜んでくれた。


 息子の誕生を皆が祝福してくれた。


 大貴族の親友からは、温かいメッセージが書かれた手紙と、美しい子供服を貰った。


 妻に聞いたところ、とんでもなく高級なもので、様々な病から身を守る魔法がかけられているものだということだった。私は彼に心を込めたお礼の手紙を送った。


 大商人の親友からは、機能的な子どもの前掛けと、王都の様々な学校の情報をまとめた資料を貰った。


 資料の最後には「奥様のことはともかく……御子息御誕生おめでとう!」などと書かれていて、私は思わず苦笑してしまった。この資料は妻には見せないでおくことにした。


 行商の親友からは、遥か遠方の国で産出される珍しい宝石を貰った。何でも正邪を見分けると言われている貴重な宝石らしい。お守りとして有り難く使わせてもらうことにした。


 緊急手術から2ヶ月後、王都から再び帰省した私は、妻と、妻に抱っこされてスヤスヤ眠る息子と一緒に病院を後にした。


 息子は、大貴族の親友から貰った子ども服に、大商人の親友から貰った前掛けをかけ、行商の親友からもらった宝石を(あしら)った帽子を被っていた。まさに皆から祝福された門出だった。

2/21誤字を修正しました。

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