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コミカライズ配信開始記念番外編SS お忍びデートには向かないアナタ《前編》

お待ちいただいていた読者さま、ありがとうございます!!

本日、ついに『ビジネスライク』のコミカライズがコミックシーモア様にて独占配信開始しました!

感謝のSSを書き下ろしましたので、少しでもお楽しみいただけると嬉しいです♪

「うーん、我ながらこれなら伯爵夫人には見えないわね……!」


 鏡の中の私はいつもの金髪ではなく、少し赤みの強い茶髪をおさげにした平民風の姿になっている。

 いつもとは違った雰囲気のメイクにご丁寧にそばかすまで足したこの顔は、伯爵夫人に見えないのはもちろんのこと、以前お忍びで領地を歩き回っていた『アナ』ともまるで別人だ。


「ダリアのお化粧の腕がいいのか、私の平民っぽさが抜けていないのか……」


 鏡の中の自分を見ながらそう独りごちていると、近くにいたマリーとダリアがクスクス笑った。


「普段の奥様はどこからどう見ても立派な伯爵夫人ですもの。二つの顔を使い分けられるのは奥様の強い武器ですわ」

「後は、伯爵様がしっかり変装してくだされば完璧ですね!」


 う、旦那様の変装かぁ……。


 ご存知の通り、うちの旦那様は顔がいい。

 何ならスタイルもいい。


 嫁バカだと笑われてしまいそうだが、事実なのだから仕方ない。


「旦那様、無駄に絵になるからなぁ……」


 マーカスプロデュースの『ザ・領民ファッション』を必要以上にファッショナブルに着こなしていないか心配だ。


 私がそうポツリと漏らすと、マリーとダリアがまたクスクスと笑った。



 私達がなぜこんな事をしているかというと、事の起こりは一週間前の領地視察に遡る。


 すっかり身バレしてお忍びでの視察はできなくなったものの、私は定期的に街へ足を運ぶことは続けていた。

 

 そして、パレード以来なんやかんやで領民達との距離が近くなった旦那様も一緒に来ることが多くなった。


 伯爵領ウチの領民達は旦那様のことが大好きなので、私達を見つけると人も精霊もみんなワラワラ寄ってくる。


 そして自分達の店のものを色々と差し入れてくれるのだが、お忍びの時と違って伯爵夫人として視察している時は『その場でパクッ』という訳にはいかない。


 行儀の問題もあるけど、ドレスとか汚すと困るし……。


 その日も、せっかく公園で屋台を開いていたおじさんが串焼き肉を勧めてくれたのに、その場では断らざるをえなかったのだ。


 伯爵夫人としては圧倒的に正しいのだろうが、不便と残念の極みである。私も串焼き肉が食べたかった。


 それに……。旦那様に、焼きたての串焼き肉を食べさせてあげたかった。


 私が未練たらしく串焼きを見ていたことに気が付いた旦那様は、お店のおじさんに頼んでそれを包んでもらってくれたのだが違うのだ。


 ああいうものは、こう、焼きたてをパクッといく良さがあってですね……!


 アレを知らないのはもったいない……と、思ってしまうのは私のエゴだろうか?


 邸に帰って、ベーカーが温め直して綺麗に皿に盛り付けてくれた串焼き肉は確かに美味しかったけれど、串から外された肉はもはや串焼きではない。


 お忍びで街に行っていた時は、色々買い食いもできて楽しかったんだけどな……。

 なんて、マリーと二人、楽しく街を散策していた日々をふと思い出す。


 あんな風に旦那様と一緒に伯爵領の街を見て回れたら最高なのに。


 目の前で、嬉しそうに今日の街の様子を話しながらナイフとフォークで綺麗にお肉を食べている旦那様の姿をジッと見つめる。


 この人が串焼き肉を立ち食いしている姿は、ちょっと想像がつかないけれど。それでも。

 

「……あの、旦那様!」

「うん? どうした、アナ」

「何というかその、領主と領主夫人として領地を視察するのはもちろんとても大切なお仕事だとは思うのですが……」


 せっかくなら、それだけでは見えてこない領地の姿を、旦那様にも見て欲しい。


「こう、変装とかして、何とか2人でお忍びで街に出かけたり……できないでしょうか?」


 私の話を聞き、一瞬キョトンと考える間を置いた旦那様が、段々と目をキラキラさせていく。


「なるほど! お忍びデートという奴だな!」

「!?」


 何か、想像していたのと違う方向にいった。


 で、デート!? え、そうなるの!?

 いや、そうなるのか!??


 あまりにはしゃぐ旦那様に、私の方も恥ずかしくなってきてアワアワ慌てる。


 助けを求めるように振り向いた先では、マリーとダリアが生温かい目で私を見守ってくれていた。恐らく助けは来ない。


「こうしてはおれん、早速準備を進めよう! マーカス、マーカスはいないか!?」


 あぁっ! マーカスごめん!!


 精霊もかくやのスピードで颯爽と部屋を出ていった旦那様が、そのままの勢いでマーカスを説き伏せ、様々な準備を整えるのにはそれから一週間とかからなかった。


 ……旦那様、仕事早くなりましたね……。


久しぶりのSSですが、お読みいただきありがとうございます! 今回のSSは長めのものをご用意したので、分けてお届けいたします♪

コミカライズも今なら3話まで無料公開していますので、ぜひこの機会にお読みいただけると嬉しいです(*´∇`*)/

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