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翌日、緊急で開かれた会議によりそれぞれの処分が決まった。

1番重たい処分を受けたのはフェシカであった。

彼女は実行犯ではなかったが、第一王子に罪を擦り付けたこと、容疑を否認し罪を認めないこと、反省の色がなく審議員に暴言を吐いたことなどが原因だ。

家族からも養育を拒否され、幽閉牢にて終身刑となった。


マリュスについては、チャールズがマリュスへの嫌がらせとしてマリュスの妹を手篭めにしようとした事が、他の護衛からの証言からもわかり情状酌量の余地があった。

あと、フェシカと違い反省の色を見せ、罪を重く捉えている点も考慮された。

それでも罪人塔での懲役10年となった。


チャールズに関しては、今回の被害者(仮)ではあるが、別件枠として王位継承権の剥奪が宣言された。

また妖精相手への残虐な行為に対する罰として、彼も幽閉牢にて終身刑となった。

これにより、チャールズ付きとなっていたメイド、護衛ともに別部署への移動となる。

一部をアル付きに戻す話もあったのだが、アルが丁寧に断っていた。


婚約者候補たちに関しては、それぞれの家の対応に任せた。

アルが婚約者候補も断った事により、第三王子のエリックの候補に行くか候補から外れ他の婚約者を探す事となる。

エリックの年齢が8歳ということもあり、年が離れているので全員辞退したことにより候補者塔は無人となった。


――――……


「よかったのかよ」

俺はアルの執務室で、机で作業しているアルに問いかける。

「せっかく婚約者候補がいっぱい増やせるチャンスだったのに」

アルは俺の言葉に心底不思議そうな顔をしながら書類から顔をあげて俺を見る。

「ベルタが俺にぴったりな相手を見つけてくれるんだろ?……なんだって救世主なんだし」

アルは王が話した、俺がアルを守ったという見解を信じていた。


「……護衛は?」

「ロンだけの方が気楽だし」

俺のなけなしの抵抗にアルは平然と答える。

部屋の隅で警備していたロンが少し嬉しそうな顔を見せていた。

「……ネバーランド行きたいか?」

俺はたまらず、話題変更を試みたが、話題の選択をミスってしまった。

アルは輝いた目で俺を見てくる。

「連れてってくれるのか?」


アルはまだネバーランドへ行くのを諦めてなかったようだ。

婚約者候補が0になっていれば、お情けで連れて行ってやらんでもない。と思っていたのは本当なのである。

実際に婚約者候補がいなくなった今、意地を張っていた俺が素直になれる最後のチャンスのような気がした。

「まあ。問題は解決したし」

「連れてってくれ!」

アルは被せ気味で俺のセリフを遮り、机から立ち上がった。


「ロン。ちょっとネバーランドに行ってくる!」

「はい。お帰りをお待ちしております」

そんな寸劇のようなやり取りをし、アルは俺を見上げてくる。

「ネバーランドにはどうやって行くんだ?」


ネバーランドへ行くには『信じる心』と『妖精の粉』があれば誰だって行けるのだ。

俺はアルに妖精の粉をふりかけると、2時間45分の空中散歩を楽しむ。

アルは最初は中に浮くことにおっかなびっくりしていたが、次第にコツを掴んで楽しそうに上空を飛んでいた。


――――……


「ここがネバーランド……」

2時間45分後、俺とアルはネバーランドの妖精の谷へとついた。

門番のヘンク爺さんとオリーブ婆さんは今だに元気で仕事をしている。

「おや、ベルタかい。ようやく王子を連れてくる気になったんだね」

俺に気づいたオリーブ婆さんが近くまできた。


俺はオリーブ婆さんに挨拶をし、秘宝の欠片の場所を聞く。

「それを答えちゃ試練にならないよ」

オリーブ婆さんはニコリと笑い、自分で探しなと優しく突き放す。

俺とアルはとりあえず、妖精の谷にある大樹を調べて見ることにした。


すれ違いざま、オリーブ婆さんは悲しそうにチャールズの妖精の事に触れた。

手紙を見つけてすぐに、王様付きの妖精が知らせに来てくれていたそうだ。

「あの子があんな目にあってたなんて……」

俺は何も返せずにただ通り過ぎるしかなかった。


「秘宝の欠片ってどこにあるんだ?」

「さっきオリーブ婆さんに聞いたが教えてくれなかった」

大樹の周りを意味もなく回ってみたり、木の上に登って見たりするがやはりなにもなかった。

「言い方は悪いが、チャールズが見つけれているという点を考慮して探すのがいいかもしれない。あいつはわざわざ木の上に登ったりはしないだろ」

アルはメタ読みをしながら木の幹をペタペタ触っていた。


そもそも大樹という場所すら合っているとも限らないのだ。

俺はネバーランドの全体図を思い出して見る。

ここ妖精の谷はネバーランドの中心点にあり、大樹とそれを囲む半径50mほどの広さの湖がある。

湖の周りにはヘンク爺さんやオリーブ婆さん、任期を終えた妖精たちが暮らす集落ができている。

そして俺は思い出した、誰も住んでいない小屋が1件、集落から外れた東側にあったということを。


俺とアルはその場所へ向かう。

「小さすぎて俺には入れないんだが……」

妖精のサイズの俺には余裕で入れるのだが、人間であるアルの半分くらいの高さに天井がある家にはアルは入れそうになかった。

「とりあえず中見てくる」

俺はアルを外に残し、その小屋の中へ入る。


小屋は中央に宝箱が設置されただけの簡素な間取りであった。

俺はその宝箱を開けようとするが、妖精の文字で『この箱は妖精には開けられない』との文字が書かれていた。

俺は外にいるアルに伝えると、アルは頑張って部屋の中に入ろうと、四つん這いになりずりずりと進む。

「これは、なかなかキツイな」

入り口も狭く、すくすくと成長したアルには随分と狭そうであった。


「よし、入れた。……なんて書いてあるんだ?」

アルがなんとか小屋の中に入り、宝箱を開ける。

宝箱の中には、『秘宝の欠片。おひとつどうぞ』と書かれた紙と、雫型をした小さな宝石が大量に入っていた。

……なにこのご自由にお持ち帰りくださいの感じ。


アルはその中の一つを取り、宝箱を閉めた。

「これが、秘宝の欠片か……」

探し求めていたものが目の前にあり、アルは感慨深くその宝を見つめる。

狭い小屋から出るときにも、ネバーランドから王城へ戻る2時間45分間もずっと、手に握って離さなかった。



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