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そんなある日、兄弟達が集まる茶会が行われた。

この茶会はもともとアルが開催していたのだが、アルの護衛がロンだけになる頃には第二王子が主催する様になっていた。


兄弟だけが集まる茶会から、婚約者候補を数名を連れて集まる茶会に変わったのはいつからだろうか。

複数人可となっていても、本当に何人も侍らしているのは第二王子のみで、他の兄弟は特定の1人だけを連れてきている。

アルも婚約者候補であるフェシカを連れていつも参加していた。


俺はこの第二王子も嫌いだ。

いつもいつも違ったメンバーを侍らして、優にひたっているのが丸わかりなのである。

性格も悪く兄であるアルに対して嫌味三昧で、自分が王位を継ぐのだと見下しているのが腹立たしい。

なぜこいつをネバーランドに連れて行ったのか、俺は第二王子付きの妖精を問い詰めたかったのだが、いつ会っても妖精は第二王子の側にいないのであった。


そして、そんな茶会で事件が起こった。

アルが末っ子である第四王子のギルバートと談笑していると、数メートル離れた場所にいた第二王子のチャールズが口を押さえ血を吐き倒れたのである。


チャールズが持っていた茶器は地面におち粉々になっている。

側にいた護衛はもちろん婚約者候補たちも悲鳴をあげるだけで、誰もチャールズに近づかなかった。

そんな中、真っ先に駆け寄ったのはアルで、周りに医者を呼ぶよう指示し、チャールズの応急処置を行う。


アルが必死にチャールズに呼びかけるなか、ようやく医者が到着しチャールズは病室へと運ばれて行った。

同時に来た城内警察により事件の調査が行われた。

茶会の参加者全員の身体検査が行われる。もちろんアルたち兄弟も例外ではない。

そしてアルの服の内ポケットから毒の入った瓶が見つかったのである。


――――……


そこからの展開は早かった、王位継承権のあるチャールズを毒殺しようとした罪により、アルは罪人塔に閉じ込められてしまった。

俺とロンはアルの無実を主張するが、アルがチャールズに嫉妬したという主張には勝てなかったのである。

俺がアルをネバーランドへ連れて行かなかったからだ。俺は初めて罪悪感を覚えた。


このままではアルが処刑されるのも時間の問題だ。

「ロン!俺たちでアルの無実を証明するしかない。城内警察なんて当てにならん」

「そうですね。俺達が動かないとですね」

俺は護衛であるロンを焚き付けて、アルの無実証明を行うことにした。


俺もロンもアルと会うことは出来ない。

そのため行えるのは茶会に参加していた人間への聞き取り調査だ。

事件時アルと会話していたギルバートはまだ3歳である。第二王女ジェシカも5歳と幼いため、2人は関与なしと見ている。

第三王子エリックも8歳と幼いが、同じ王位継承権を持つ相手としてライバル視している可能性もある。


犯人になり得る候補を俺とロンは上げていく。

1番可能性として高いのはやはり第二王子の婚約者候補や側付きの護衛やメイドたちだろう。

「第三王子付きの護衛やメイドの可能性もあります。主人を思っての行き過ぎた行動はよくありますので」

「問題はアルの懐に誰が毒瓶を仕込んだかだ。これができる人間は限られてるだろ」

「それこそ俺やベルタ様、あとは婚約者候補のフェシカ様以外はアルフレード様に触るのは不可能ですね」

茶会でアルの近くには本当に人がいなかった。それでなくても懐など触れるものでもないのだ。

だからこそ、毒瓶を仕込める相手は限られてしまう。


「俺もロンも違うなら、もうフェシカしか残ってないんだが?」

「しかし、フェシカ様がそんな事をする理由がありません。やはり、動機から絞るべきでは?」

普段から仲むつまじく過ごすアルとフェシカを見てきているので、確かに可能性は低い。

⋯⋯まぁ、俺が邪魔ばかりしてたわけだが。


「とりあえず、側にいた護衛と話がしたいな」

「それでしたら明日、会いに行ってみましょう」

今日はもう他人を訪れる時間ではないため、議論は持ち越すことにした。

俺は初めてアルのいない夜を過ごしたのである。


――――……


「お茶会で側付き護衛を行っていたマリュスです」

護衛対象のいないロンはもちろん、護衛対象が危篤状態で床にいるマリュスは、お情け程度の城の警備を行うことになっていた。

その時間を使ってマリュスと会話する事に成功した。


「久しぶりだな、マリュス」

マリュスはもともとはアル付きの護衛だったのだが、アルの身辺整理がされた際に第二王子付きの護衛へと移動となったのだ。

「ベルタ様。お久しぶりです。お元気そうでなりよりです」

「マリュスも体だけは元気そうだな。主人がああなってこってり絞られたか?」

「まあ、そうですね。減給処分になりました」

もともとはアルの護衛で俺とも交流のある相手のため、相手の人となりは知っていた。


「ところで、第二王子に恨みのある人間に心当たりがあるか?」

だからこそマリュスがとても憔悴している上に、どこか精神が不安定になっているのが見て取れた。

「……正直な話、たくさんいらっしゃいます。それこそ側付きの護衛は一様に」

「まぁ、そうだろうな。あの性格だもんな。……マリュスもあいつにいじめられたか?」

「そうですね。意味のないしごきや暴言などは日常茶飯事でしたね」


マリュスと会話をし、かなり闇が深いことが理解できた。

第二王子のあの性格はアルに対してだけなく、周りの全ての人間に対して同じなのだそうだ。

気に入らなけらば暴れ、何かにつけて物を壊し、人にあたり、自分の立場を笠に着る行動を繰り返しているそうだ。

気に入ったメイドを部屋に連れ込むこともあれば、護衛の婚約者を襲ったケースもあるらしい。

側付きのメイドはチャールズの視界に入らないようビクビクしながら仕事をし、側付きの護衛もチャールズの逆鱗に触れないよう注意しながら仕事をしているという。

恨みを買うのだけは一丁前だな。


「……どうしましょう。動機のある人物が多すぎます」

話を一緒に聞いていたロンと一緒に頭をかかえるしかなかった。

護衛と襲われた婚約者あたりが怪しく思えたが、マリュス曰くすぐに仕事を辞め城を去っているらしい。

なお、側付き護衛のマリュスもチャールズの側付き妖精を見たことがないそうだ。



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