利き手でペンを握ったオレは、書いてる最中に原稿用紙がズレたりしないように、左手を原稿用紙の左側に添える。
目の前の壁に被害者女性の眼球が記憶している映像が映し出される。
被害者女性が自室で起床してから、被害に遭って殺害される迄の一部始終を見続けながら、被害者女性の行動と発した言葉を正確に事細かく詳細に書き起こす。
何時何分、何処で、誰と会って、何をしていたのか、何を話していたのか──、セロが読める字で最後迄書き終えないといけない。
オレはひたすらペンを持つ右手を動かして原稿用紙に書き起こす作業を黙々と続けた。
オレが壁に映し出される映像を見ながら書き起こしをしている間、 “ オカルト謎探偵 ” と呼ばれているセロが何をしているのかと言うと──、ベッドの上に腰を下ろして読書に耽っている。
助手のオレに書き起こしを丸投げしといて、自分は趣味の読書を堪能するなんて、何ともいいご身分だ。
正午になったら食堂で昼食を済ませたら、宿泊室へ戻って書き起こし作業の続きを始める。
夕食の時間も同様だ。
オレは就寝するギリギリ迄、書き起こし作業を続ける。
書き起こし作業を午前9時から始めて、就寝する23時迄の約12時間で、約9時間分の書き起こしを済ませる予定だ。
明日は朝食を終えたら直ぐに書き起こし作業に取り掛からないとだ。
明日は愈々被害者女性が事件現場になる場所で被害に遭うシーンが映し出されるだろう。
被害者女性が殺害されるシーンには、被害者女性の殺害に及んだ加害者──犯人の顔を眼球が確りと目撃しているかも知れない。
セロに掛かればが犯人の顔が判明してしまえば探し出すのは簡単な事だ。
眼球が犯人の容姿を捉えていて、特徴が映し出されれば、犯行に及んだ後に犯人が身に付けていた全ての所持品を〈 テフの源みなもと 〉で当とう時じの状じょう態たいで構こう成せいする事ことが出で来きる。
魂たましいの入はいっていない犯はん人にんの肉にく体たいすらも〈 テ原げん質しつフの源みなもと 〉で構こう成せいしてしまえるのだから、指し紋もん,血けつ液えきだって取とり放ほう題だいだ。
ありとあらゆる色いろんな検けん査さが出で来きちゃうわけだから、殺さつ人じん犯はんは実じっ験けんが大だい好すきなセロから逃にげられない。
魂たましいの入はいってない肉にく体たいを “ 抜ぬけ殻がら ” って言いってるんだけど、要ようは腐ふ敗はいしない死し体たいみたいなもんだ。
セロが犯はん人にんを実じっモル験けんモ台だいットに使つかう為ために確かく保ほした時ときは、この抜ぬけ殻がらを死し体たいとして使つかう場ば合あいがある。
要ようするにだ、セロの気き分ぶん次し第だいで生いきた状じょう態たいの犯はん人にんを警けい察さつ署しょへ連れん行こうして渡わたすのか──、犯はん人にんを死しんだ事ことにして死し体たいを発はっ見けんした風ふうを装よそおってセラッピド捜そう査さ官かんへ連れん絡らくするのか──、どちらの結けっ果かにするかはセロ次し第だいなわけで……。
今こん回かいの犯はん人にんはど・っ・ち・になるんだろうな…。
セロに目めを付つけられて実じっモル験けんモ台だいットにされる犯はん人にんに対たいしては本ほん当とに御ご愁しゅう傷しょう様さまだと思おもう。
だって、どんなに「 死しにたい 」と思おもっても「 死しなせてくれ 」っても懇こん願がんしても絶ぜっ対たいに死しなせてもらえないんだ。
セロが飽あきる迄まで繰くり返かえし実じっモル験けんモ台だいットとして苦くるしむ事ことになるんだから。