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藤木くんと永沢くん

 藤木くんが世界三大ひきょうに選ばれたとき、オニオン座が煌めきました。煌煌(こうこう)と灯る(きらきらというよりはぎらぎらでしたが)光のもと、顔面上半分をくすんだ紫色に染め上げた、沈鬱な、藤木くんの顔が浮かび上がりました。逆三角の目は泳いでしまう目の黙約です。永沢くんは藤木くんの紫色の淀みを自身の体験の苛烈度で計りました。それは我が家が火事で焼失するという体験と同一でした。


「卑怯じゃないよ秘境だよ」


 永沢くんから思いもかけない言葉が漏れました。この場合、卑怯が機能語で、秘境が内容語でした。アクセントのある日本語の文には、時に、モノクロの世界をカラーの世界に、色彩を持たない世界を色彩を持った世界に変えてしまう効果があります。


 藤木くんの全身に、ナイアガラの滝の幻が流れ落ちました。猛烈な飛沫の白煙りが落ち着くと、藤木くんの逆三角の目に、オニオンの匂いを消した無臭の、えもいわれぬ優しい永沢くんの顔が映りました。


 藤木くんはこの体験を通して感得したことを後年、オニオニズム宣言のなかで次のように語っています。


 その人らしさとは、人のザイン(そうある)を現すものではなく、人のゾルレン(そうあるべき)を現すものであるという思いがこの時、心に蔵われました。つまり人生において、その人が採用しているその人らしさが、ただザインの表示であるならば、感性と体育を表現するだけであり、いかに個性的に見えようとそれはその人らしさとは言えません。人生におけるその人らしさとは、ゾルレンの表現であって、未到達なものへの純粋な挑戦であるが故に、人生の意義と関わりを持つことができるのです。何故、人生の意義とは常に未到達なものだからです。こういう思いに従って、僕の僕らしさは、あるがままの僕とは離れて、憧憬と自己改造の試みから出ています。


 確かに、花輪くんの服装では夏の軽井沢は歩けてもアマゾンは歩けません。藤木くんには、猫にマタタビがあるように、隣に永沢くんがいました。藤木くんは、猫がマタタビのある成分を蚊よけに使用するように、永沢くんのある成分を人生に利用しました。それで藤木くんの営為は、凛冽の永沢くんに鼓舞されて、涙を誘うものになりました。人生におけるポリアンナ効果に否定的な心理学者でさえ、このオニオン効果は認めざるを得ませんでした。


 みなさんは、ちびまる子ちゃんのキャラクターで誰が一番好きですか?僕は悪口、タメ口が嫌いなように、野口さんが好きです。野口さんがお笑い好きというそれだけの理由で。


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