38 藁
「くくく……今日は楽しい事になりそうです」
復活した小麦畑と大豆畑、更に畑②が追加されたことで雑草取りの隊長は嬉しそうに口元をゆがめた。
昨日、俺との時間が少なくて寂しいとか言ってた気がするけど、ホントは雑草取りが少なくて寂しかったのではないかと思ってしまう。
「アルさん。さっそく始めましょう」
「了解しました隊長!」
ビシッ!と隊長に敬礼をした。
ある意味俺もノリノリだな、と心の中で苦笑する。
「ああー、そうでした。私は今日から隊長から女王になったので間違えないでくださいね」
「えっ!?」
俺は今、物凄い間抜けな顔で隊長、いや、女王をみているのだろう。
そりゃあクレアは元王女だから女王になってもおかしくないが、雑草取りの女王って呼ばれて嬉しいのだろうか。
「えっと、承知しました女王さま?」
「~~~~~ッ!!」
悶えてるよこの人。
うん、きっとものすごく嬉しいんだろうな。
「……で、では始めましょうか。アルバート。しっかりついてくるのですよ」
もうアルさんとも呼ばれなくなったよ。
こうして俺は女王様と日課の雑草取りを始めるのであった。
▽▽▽▽▽
日課が終わり家に帰ると、居間の隅に大量の藁が置いてあった。
「藁?」
「藁すら知らないのですか? やはりポンコ――」
「いや、藁は知ってるから。なんでこんな大量に置いてあるの?」
「ベッドに敷くからですよ。リズ様が厚めの布を作ってくださいましたので、それを上にかければ葉っぱよりは快適に眠れるはずです」
なるほど。そういえば、外にいたころは藁の上でよく寝ていたっけ。
ここにきてから葉っぱがメインだったから忘れてた。
「ふふん。お兄ちゃん。実はマットレスだけじゃないんだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ。サラおねえちゃん言ってあげて!」
「なんで私に頼むのですか? まぁ、別にいいですけど。リズ様は枕用の布も作ってくれましたので枕も作れるようになりました」
「おお! マジか!!」
布団は俺の魔力で快適な温度にしてるからまだなくてもいいけど、枕は素直に嬉しい。
「枕も出来るのですか!? リズちゃんありがとうございます」
クレアも嬉しそうに何度もリズにお辞儀している。
今まで何も言わなかったけど、やっぱクレアも不便なことはあったんだろうなと思ってしまう。
「だから、お昼ご飯食べ終わったらみんなで作ろうね」
リズの提案に俺たち3人は頷き、みんなで遅めの昼食を食べ始めた。
昼食を食べ終わった俺たちは食後の休みも程々にして藁を束ね始めた。
そのまま敷くとずれたりベッドから落ちてしまうのだ。
自分の好きな量をまとめたら糸で上、真ん中、下を縛っていく。
「お兄ちゃんのベッドが一番大きいからリズが手伝ってあげるね」
リズは俺の横にちょこんと座ってまとめた藁を器用に糸で縛っていく。
エルフ族は綺麗な顔立ちが多いとクレアから聞いているが、リズはどちらかというと可愛い顔をしている。
ブラウンのショートヘアーは元気なリズに似合っているし、クリッとしてる茶色の大きな瞳はリズの可愛さを更に強調している。
まぁ、一番の特徴はその幼い体型で、クレアとサラは俺の肩くらいまで身長があるが、リズはみぞおちくらいまでしかない。
イシュタは俺の胸くらいまであるのでリズはイシュタより小さい事になる。
「ん? どうかしたの?」
俺がずっと見てたのに気付いたリズは首をかしげた。
「あっ! いや、何でもない」
「……ふぅ~ん」
それだけ言うとリズは視線を戻して藁を束ね始めたが、急に手を止めて俺に寄りかかってきた。
「お、おい! リズ」
「ん~? だってお兄ちゃんがリズの事じ~~っと見てるんだもん。こうして欲しかったんでしょ?」
「えっ? あ、いや、違うよ」
「じゃあ、なんでリズ見てたの~?」
「えーっと、その、リズは可愛いなって思ってさ……」
リズから目をそらし、俺は頬をかきながらそう呟く。
リズが可愛いのは本当なので嘘は言っていないが、面というのは恥ずかしい。
「え、えへへ。お兄ちゃんありがとう!」
柔らかい感触が頬に押しつけられた。
驚いて顔を離すとリズが真っ赤な顔で微笑んでいる。
「可愛いって言ってくれたお礼だよ」
ポカーンとする俺にちろっと舌を出してウインクをすると、スッと身体を離しニコニコしながら藁を縛り始めた。
「リ、リズちゃん! 今、アルさんにキ、キ、キスしませんでした!?」
リズの隣で俺たちの一部始終見ていたクレアが掴みかかるくらいの勢いでリズを問いただしている。
「ほっぺだよ? これくらいみんなしてるでしょ?」
お姉ちゃんによくしてたよ、とリズは何でもないように言う。
「それはリズちゃんのお姉さんが女性だからです。私はお兄様にも弟のヘンリーにもそのようなことをした事がありません!」
「ならクレアおねえちゃんもお兄ちゃんにしてみたら?」
「なっ!?」
ぼふっと顔を紅潮させたクレアはチラチラと俺の方を見ている。
「ふふ~ん。クレアおねえちゃんじゃまだ早いかな~?」
「で、出来ますよ! 私はリズちゃんより3つも年上なんですから!」
リズに挑発されたクレアは勢いよく立ち上がりすたすたと俺の横に来るとそのまま腰を降ろした。
「アルさん! 目をつぶってください!」
「お、おう」
怒鳴り声にも似た声でクレアにそう言われ、俺はたじろぎながらも固く目をつぶった。
ムードも何もないが、クレアのあのふっくらとして瑞々しい唇が頬に当たると思うと鼓動が早くなる。
「はい。そこまでです」
「ん~~~!!」
何事かと目を開けて見るとサラがクレアの口を手で押さえていた。
「ぷはっ! サ、サラ、一体何するのですか!?」
「あんなポンコツにするくらいなら私にしてください」
さぁ、行きましょう!とサラはクレアを担いで自分の部屋に戻っていった。
「私ならどこにしていただいても大丈夫ですので、遠慮なくしてください!」
「えっ!? サラ! いやっ! そんなところにキスしたくありません!」
「ちゃんと綺麗にしていますから大丈夫です! クレア様! 一生のお願いです!!」
「そんなのに一生を使わないでください! あっ! やめてサラ! キャアァ~~~~~!!」
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