31 機織機
良かったら読んでくださいm(__)m
秋の収穫まで約2週間となったころ、サラが機織機を完成させた。
サラが言うには足踏織機と言ってペダルを踏むことで糸を編んでいくらしい。
らしいというのは説明を受けても俺にはさっぱりわからなかったからだ。
ポンコツは触らない方がいいですよ、と言われちょっと泣いた。
機織機は大きいので家では出来ず、燻製小屋の隣に専用の小屋を作ることになった。
「おーーいクレア。その板取ってくれーー」
俺は屋根から下にいるクレアに指示を出す。
「アルさんこれですか? ……んしょっと、はいどうぞ」
「サンキュー」
俺は屋根に板を張り付けてトントンと木の釘を打ち付けていく。
この機織機小屋はある意味リベンジである。
燻製小屋が散々だった俺とクレアは2人で作らせてくれとサラにお願いした。
まぁ、2人で作るなら頑張ってください、とサラも了承してくれたのである。
「……ふうー。これでいいかな」
俺は最後の板を打ち付けると額の汗を拭った。
サラが用意した木材は綺麗に無くなっており、残りは瓦をセットするだけだ。
「アルさーーん。少し休憩しませんかー?」
ふむ……切りもいいしクレアの言葉に甘えるとするか。
俺は頷いて屋根から降りようとしたらバランスを崩してそのまま落下した。
「アルさん!!」
クレアが落ちる俺を受け止めてくれたお陰で地面の激突は避けられたが、俺はクレアにお姫様抱っこをされた形になってしまった。
「「…………」」
「「………………」」
「「……………………」」
俺はそっとクレアの頬を優しくなでる。
「…んぅ……ア、アルさん……」
トロンとした目で見つめてくるクレアは俺に顔を近づけ……
「いや、普通逆じゃない?」
サラの冷たい声で我に返った。
「サ、サ、サ、サラ! こ、これは、その、ち、違うんです!」
クレアは真っ赤になりながら手を放しサラに詰め寄る。
俺は背中から落下し「ぐえっ!」っとみじめな声を上げた。
「ふーーん。なにが違うのですかクレア様?」
「で、で、ですから、ア、アルさんが屋根からお、落ちてしまいまして。わ、わたしが助けただけです!」
「本当にそれだけですかぁ? 私にはキスしようと見えたのですが?」
「キキキキキスなどしてません!!」
どうみても狼狽えてるクレアをジト目で見ていたサラだったが、スタスタと倒れてる俺の方に来て、
「お覚悟を!」
と綺麗なかかと落としを俺の腹にお見舞いした。
「ギャアアアアアア!!!」
悲鳴を上げてのた打ち回る俺を尻目にサラはクレアの手を引いて家に戻っていった。
▽▽▽▽▽
痛みが引いたころには夜になっていたので俺は小屋作りを諦め家に帰った。
「アルバート様はあちらで食べてください」
入ってくるや否やサラは隅っこを指差した。
そこにはポツンとトマトが一つ置いてある。
「……え、えっと、、トマトだけ……かな?」
「むしろトマトだけでもありがたいと思ってください。クレア様に手を出そうとする野蛮人には食事抜きでもいいくらいです!」
「ア、アルさん。私のリンゴ一つ差し上げますから……」
「クレア様!!」
「は、はい!! す、すみません……」
サラにキッと睨まれしゅんと小さくなるクレア。
今日の夕飯は過去最大の気まずさであった……
▽▽▽▽▽
「腹減ったなぁ……」
夕飯後、あの気まずさに耐えきれず俺は夜の散歩をしていた。
「まぁ、気持ちも伝えずあんなことしようとした罰だな」
ガリガリと頭を掻いて今日の事を反省する。
はぁーっとため息をつきながら歩いてると小さいダークフェンリルがトコトコと寄ってきた。
「あれ?ルリじゃないか。ダクロウ君とフェン君は一緒じゃないの?」
ルリはダクロウ君とフェン君の子供だ。
俺としてはダクルリと名付けたがったが「アルさんとサラは名前つけるのダメです」とクレアに言われてちょっとショックだった。
俺はルリの頭をなでなでしてるとダクロウ君がローブを羽織った人?を咥えてきた。
「え!?ダクロウ君!その人はどうしたの!?」
ダクロウ君はそっと離すと森の方に向かって首を何度も向けた。
結界の外で拾ってきたのか、と思いその人を見る。
ローブで顔しか見えないがすやすやと眠ってるだけなので命に別状はないようだ。
「この長い耳は……もしかしてエルフか??」
なぜエルフがこの森に?と思いながら俺はその人を抱えて家に帰った。
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