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ようこそ死神農場へ!  作者: ととまこ
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2 王女がここに住む事になる

2話目投稿です。

良かったら読んでください。

「……あなた様があの『死神アルバート』なのですか?」


 王女様は青ざめた顔で俺を見ている。

 はっきり言うが、俺は死神ではない。

 ある街で起こった出来事を俺のせいにされただけだ。

 だが、それを信じてくれる人は誰も居なかった。

 まぁ、俺の過去は追々わかると思うので今は詳しく言わないが。


「そうだ」


 ここで死神じゃないと言ってもどうせ信じやしないだろうし、大人しく死神の称号を受け取っておこう。

 それに、ある意味当たっているのも事実だし。


「……そうは見えませんけど?」


 驚いて王女様をみる。

 あれ?この子は信じてくれるんじゃないか?


「私が聞いた『死神アルバート』は3mの巨人で体から黒い瘴気を発し、その瘴気に触れたものすべてに死の病をもたらす者と聞かされています」


 誰それ?他のアルバートでそんな奴が居るのか?


「……えっと、そのアルバートさんは人族?魔族?」


「いえ、ハーフと聞いてますけど」


 あっ!やっぱそれ俺だ。

 人族と魔族が結ばれて子をなすという事は両方の種族の禁忌中の禁忌とされている。

 それを破った者はどちらの種族にも受け入れてもらえない。


「んー、俺はハーフだから王女様の言う『死神アルバート』はやっぱり俺の事だと思うよ」


 このまま誤魔化せば王女様は騙せるかもしれないけど、濡れ衣を着せられてる3mの巨人さんが可哀そうだし嘘も言いたくない。


「えっ? で、では『死神アルバート』は3mの巨人ではないのですか!?」


「うん。間違いなく俺だよ、その証拠に……」


 自分の中に巡る魔力に集中する。

 どの種族にも生まれたときから体内に魔力が存在する。

 しかし、種族によってその魔力の使い方が異なる。

 エルフ族とドワーフ族はその魔力の使い方は知らないが、人族は『身体魔法』、魔族は『放出魔法』になる。


 『身体魔法』は自身の体に魔力を流し身体を大幅に強化する魔法。

 『放出魔法』は外に魔力を放ち炎とか氷とかを出す魔法。


 俺はハーフなのでどちらも使える。


「……出でよ、炎!!」


 右手を広げて家の外に向かって突き出した。

 すると、ボウッ!と音を立てて拳サイズの炎が飛び出す。

 放出魔法を始めて見たのか王女様はポカーンとしている。


「これが放出魔法です。次は……」


 また魔力を集中させる。

 身体魔法は体に魔力を流すだけだから目には見えないが、人族ならその魔力を感知できる。

 俺は魔力を体に流して王女様をみた。

 

「これで、俺が身体魔法と放出魔法どちらも使えるとわかってくれました?」


 王女様はこくこくと頷く。


「……え、えっと、、その……非常に、言いにくい事なんですけど……」


 何か王女様の言葉の歯切れが悪いな。


「その、非常に弱いと言いますか。放出魔法はよくわかりませんが身体魔法に関して私の半分以下といいますか……」


 ぐふ……わかってるさ!俺はどっちも使えるけどどっちも弱いんだよ!!



▽▽▽▽▽



「……アルバート様、そろそろ機嫌を直してくださいませんか?」


 シャクシャクとリンゴを齧りながら王女様が俺を慰めている。

 俺は拗ねて隅っこでずっとのの字を書いていた。

 てか、リンゴいつの間に見つけたんだ?


「ほら、イチゴもありますから一緒に頂きましょうよ」


 いや、王女様、、それ俺が収穫したものだから。

 それにしても、勝手に食べて意外と図々しいねこの王女様は。


「…………頂きます」


 王女様と一緒にイチゴを食べ始める。


「……んで、王女様はなぜこの森に?」


 当然の疑問を口にしたのだが、王女様はイチゴを食べるのをやめて俯いてしまった。


「……創造神『ニルヴァース』様に会いに来たのです。創造神様なら私の無実を証明してくれると思いまして」


 ああ、あの噂か……

 この【ニルヴァースの森】は創造神ニルヴァースが名前の由来だ。

 そして【ニルヴァースの森】の中央には創造神ニルヴァースがいると言われてる。

 もちろん創造神ニルヴァースはいないのでそんな噂はデマなのだが、誰も到達したことが無いので未だに噂になってる。

 まぁ、1年くらい前に1週間ほどいたこともあるけど。


「ニルヴァースは居ない、ここに居るのは俺だけだ」


 王女様は「そうですか……」と呟くように言った。

 そして、目に涙を浮かべて、、


「……わ、たし、、国を追われてきました……」


 ぽろぽろ涙をこぼし、、


「……お兄様、、に突然、反逆者、、扱いされて、」

 

 俺は王女様を静かに抱きしめ、王女様は俺の胸の中で泣いた。



▽▽▽▽▽



 外も暗くなり始め夜になる頃、王女様は泣き止んだので俺は体を離した。

 いや、これ以上は色々俺が不味い事になりそうだったから離したんだけどね。

 いい匂いするし、柔らかいし、俺、水浴びだけしかしてないから臭いと思ったし……


「すみません。もう、大丈夫ですから」


 泣いたのが恥ずかしいのか照れ笑いを浮かべる。

 その可愛い笑顔にドキッ!としてしまう。


「……そ、そうか。……んで、王女様はこれからどうする気なの?」


 恐らく外の世界に戻ろうとすれば今度こそ殺されるだろう。

 この森はそんな甘くない。


「そ、その、もしアルバート様が宜しければここに居させて戴けませんか?」


 まぁ、そうなるよね……

 俺の理性持つよね?大丈夫だよね?王女様の身体魔法は俺の倍以上みたいだから変なことしようとしたら殴ってもらえばいいか。


「……わかった。俺がもし変なことしようとしたら殴ってもらっていいから」


「……私はアルバート様を信じていますから平気ですよ」


 にっこりと笑顔を見せる王女様。

 そんな笑顔見せられたら何も出来ないなこりゃ。


「わかった。じゃあ、これから一緒に生活するにあたって色々ルールを決めよう」


 まだ今日は終わらない……

読んでくれてありがとうございます。

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