10 召喚魔法について
10話です。
どうぞ……
「……んっ……」
頭に柔らかい感触を感じる。
こんな気持ちがよくいい匂いがする枕は久しぶりだ。
寝ぼけながらその枕に頭をスリスリしたり手で何度も撫でた。
ひぅっ!と誰かの叫び声が聞こえたが気にしない。
うーむ、それにしても柔らかい。
ダクロウ君も柔らかいが毛が口に入ったりするからなぁ。
昔、イシュタにされた膝枕の感触に似ているが、あの時よりもうちょっと柔らかい感じがする。
「……膝枕?」
目を開けると2つの山と、茹でタコみたいに顔を真っ赤にしてるクレアが見えた。
▽▽▽▽▽
「……ごめんなさい!」
俺は土下座する勢いでクレアに謝っていた。
「言い訳するつもりじゃ無いんだが、俺は寝起きが悪いらしい」
イシュタは「それも好き」と言ってくれたがクレアは違うだろうし、水浴びしてないから頭についてた砂がクレアの綺麗な膝に付いてるし、最悪だ。
「あ、謝らないでください。私が勝手にしただけですから」
「……そ、そうか。ありがとな」
怒らずに許してくれるクレアはやっぱり優しい子だ。
ここに来なければきっといい夫をもらって幸せな家庭を築いていただろう。
この【アースランド大陸】は一夫一妻制だ。
俺はイシュタを妻にもらっているから許可なく他の女性に手を出す気はない。
理性が頑張って働いてるのもイシュタを裏切りたくないって気持ちが大きい。
といっても、キスはしたがその先はしてないけど。
次に会えるのは確か1年後くらいだろうから、その時は本当の妻になってもらおうと思ってる。
「…あの、アルさん。聞きたいことがあるのですが宜しいですか?」
「ん?」
「ライフ様を呼んでいただきましたけど、その時ライフ様が言っていた強制召喚とは何なのでしょうか?」
「ああ。強制召喚は神が他の神を無理やり呼び出すことなんだ。 まぁ、下級神が上級神を呼び出すことは出来ないし、上級神が創造神を呼ぶことも出来ない。 それに、神脈が弱い場所に呼ぶ事が多いし、魔力の消費も大きいから少ない時間しか居られない」
神が留まるには神脈と自身の魔力が必要だ。
神脈が弱いと魔力の消費が大幅に増える。
「え?それではイシュタ様はどうやってニルヴァース様を呼び出したのですか?」
「んー、『神の涙』の時だったし、呼び出したというか、呼んだら勝手に降りてきたというか」
「神の涙?降りてきた?」
クレアは首をかしげる。
王族でも知らないことを俺が知ってるのが不思議なのだろう。
まぁ、俺はイシュタたちに色々教わったから知ってるだけなのだが。
「神の涙は2年に一度、すべての神脈が1週間強まる現象の事なんだ。それと、クレアは勘違いしてるけど神は自らの意思で降りてくることも可能なんだぞ」
「そうなのですか!?」
「ああ。イシュタは何度も来てたけど俺が辞めさせたんだ」
神の持ってる魔力は俺たちとは次元が違う。
だが、その量を回復させるにも多くの時間が必要だ。
死神の仕事がある中で俺に会いに来るのは相当の負担だっただろう。
来る度に辛そうにしてる姿に俺は耐えられなかった。
「ということは、神殿で召喚しているのは神が自ら降りてきてくれているのですか?」
「いや、あれは正規召喚と呼ぶんだけど根本的には強制召喚と同じだよ。 正規召喚は強い神脈と留まれる魔力を提供してるだけなんだ。 強制召喚との違いは留まれる時間が長いか短いかの違いしかない」
「……なるほど。アルさん、色々教えてくれてありがとうございます」
「別にお礼を言われるほどじゃないからいいよ」
俺は恥ずかしくなって頭をポリポリと掻いた。
そんな俺を見てクレアはくすくすと笑っている。
「………………んっ……ここは……?」
そしてサラさんが目を覚ました。
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