1 アルバートは王女を拾う
1話目です。
良かったら読んでください。
ガウガウ!ウー!
「……ん? どうしたダクロウ君」
ダクロウ君が吠えるとは珍しい。
この辺りは結界が張られているので悪意のある魔獣や魔虫は入ってこれない。
ガウ!
どうやら来てくれと言ってる様だ。
俺は畑の雑草取りを切り上げると、ダクロウ君と共にその場所に向かった。
▽▽▽▽▽
「………お!」
ダクロウ君が案内した場所には女性が倒れていた。
着ているドレスはボロボロになっているが、その生地を見れば高貴な生まれだと俺でもわかる。
「凄いなこの人、よくここまで来れたな」
ここは【ニルヴァースの森】と呼ばれてる森だ。
直径100kmの広大な森は凶暴な魔獣や魔虫が生息しているので普通の者は決して立ち入ることはない。
俺は【ニルヴァースの森】の中央に住んでいるが、ある人物が作ってくれた結界の中で生活してるので安全なのだ。
それでも、結界は中央から直径10kmしか効果はなく、それ以外の場所ではすぐ殺されてしまう。
外から結界内に辿り着くことは、万分の一、いや、100万分の一くらいの確立になるだろう。
「……流石にこのまま放置じゃ可哀そうだよな」
彼女を抱き抱えると家に向かって歩き出した。
▽▽▽▽▽
「よいしょっと!」
彼女を俺の自作したベットに寝かせ、改めて彼女をみる。
整った顔立ちにサラサラと手入れされている腰まで伸びた金髪、文句の付けようがないプロポーション、正直、理性を抑えるのに苦労した。
半年くらい1人での生活だったから他の人、ましてこんな美少女だったらムラムラするのが普通だろ。
ダクロウ君はダークフェンリルだし、リビデ君はリビングデッドアーマーだから人じゃないしな。
「……まぁ、人族か魔族かはわからないけど」
この【アースランド大陸】には4種類の種族がいる。
『人族』、『魔族』、「エルフ族』、『ドワーフ族』
エルフ族とドワーフ族は見たことがないので知らないが、人族と魔族は見た目は同じ種族だ。
違うのは、使える魔法が『身体魔法』と『放出魔法』ということだけ。
その辺りはまた後日説明するが、兎に角見た目はどちらも変わらないという事。
「見た目は同じ種族同士で戦争するとはやっぱ愚かだよな」
人族と魔族は200年に渡って戦争をしている。
俺は森にいるから外の様子は知らないので、もしかしたらもう終わってるのかもしれないけどさ。
「……取り敢えず彼女はここに寝かせておくか。まだ雑草取りが残ってるし」
雑草取りに向かおうとして家を出たとき、自分の手が土だらけだったのに気付いた。
ドレス、汚してすまん!と心の中で彼女に謝ると俺は畑に向かった。
▽▽▽▽▽
「……今日の日課終了!」
あの後、何時もの日課である雑草取り、水撒き、虫取りを終え家に向かっていた。
家までもう少しという所で彼女がひょこっと顔を出した。
「……お!おー……」
おーい!と言おうとしたら彼女は俺を見て慌てて家に戻ってしまった。
あれ?と首をかしげるが気にせず家に入る。
「……なんで戻っちゃったのさ」
そう言って家に入ると彼女は両手で顔を隠して、、
「……ふ、ふふふ服を、き、着てください!」
自分の姿をみた。
上半身裸、靴はなく裸足、葉っぱで作った腰巻を巻いている。
「服着てるじゃないか」
俺は腰巻を指差す。
「上半身裸ではないですか!それに、その腰巻も何とかしてください!」
怒り気味に言っているが、指の隙間からチラチラと俺を見ている。
「そう言われてもこれしかないんだよ。ここに来た時に着ていた服はボロボロでもう着れないしさ」
ほらっあれ、と指差すと、そこには俺がここに来る前に着ていた服らしきものがあった。
「だから悪いんだけど、これで我慢してもらうしかないんだ」
ごめんと謝ると彼女は恐る恐る手を離した。
直視するのが恥ずかしいのか、リンゴみたいに真っ赤な顔をして俯いている。
「……え、えっと、助けて頂いてありがとうございます。私はミッドフォード国の第一王女『クレア・ミッドフォード』と申します」
そう言って深々とお辞儀をする。
ミッドフォード国は【アーランド大陸】の西側にある人族の国だ。
東側に魔族のシェヴァルメ国があり、その中間にこのニルヴァースの森がある。
なるほど、高貴な人だとは思ったがまさか王女様だったとは思わなかった。
人族でも魔族でも、王族にしかセカンドネームを名乗ることは許されない。
なのでこの人は王女様なんだろうが、、
「んー、疑う訳じゃないんだけどさ、証拠とかあるのかな?」
偽物なら問題ないだろうが、ホントに王女様だったら丁重にもてなした方がいいだろう。
もてなす物などここにはないが……
「……そうですね。それではこれでどうでしょう?」
王女様は顔を上げて俺を見る。
その目は王族の証である赤い目をしていた。
王族は生まれたときからその目の色が普通の人とは異なる。
人族は赤い目、魔族は青い目。
こればかりは何をしても変わらないので、目の前にいる人は間違いなく王女様なのだろう。
「……可愛い」
「ふぇ!?」
あっ!やばっ!赤い目とかどうでもよくて王女様をみたらそう言ってしまった。
王女様も変な声上げてるし……あっ、また顔が真っ赤になったぞ。
「あー、ごめん。今の忘れて。えっと……疑ってごめんなさい。俺の名前は『アルバート』、一応ここの家の持ち主です」
真っ赤になって俯いてしまった王女様に自分の非礼を詫びて名前を口にする。
王女様はひゅーひゅーと小さく息を吐きながら真っ赤になった顔を手で仰いでいる。
「……えっと、王女様聞いてますか?」
「ひゃい! ちゃ、ちゃんと聞いていますよ! ア、アルコール様ですよね」
「アルバートです。アルコールはお酒です」
俺の突っ込みに冷静になったのか、落ち着いた感じに戻る王女様。
「ア、アルバート様ですか大変失礼しました。あれ?でも、アルバートって名前確か……」
そりゃ知ってるか。
アルバートという名前自体珍しいからな。
「……俺の名前はアルバート。人からは『死神』と言われています」
読んでくれてありがとうございます。