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装剣物語  作者: 川合総司
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龍と狼 後編

敵の隊長機にドラゴニックランチャーのBモードで砲撃したが…難なく回避された。

この動きに見覚えがあると思ったが間違いない…2ヶ月前の新型機だ!


それから実体剣らしきものでこちらを攻撃しようとしている。距離が遠いと思ったが次の瞬間、剣にエネルギーが溜まり、昔見た特撮の技のような波状のエネルギー弾が放たれた。


避けられないと判断し、アークフィールドを発動させて直撃は避けたものの衝撃は大きかったため、イクスドラグーンの体勢が一瞬崩れた。すぐに立て直したものの距離をかなり詰められてしまい、剣をふりかざされかける。


ここで使うのか…仕方ない。

両腕部に搭載されたドラゴニッククローを展開して、左腕で剣を掴むと右腕でもう片方の腕を掴んで敵機の腹部を蹴り飛ばした。


隊長機は体勢を崩したがすぐに立て直したがこちらに攻撃してこない。何故かと思ったが直接こちらに通信が来た。

「かなり強いな。並の腕ではないと思っていたがまさかあの時の新型機のパイロットだとはな…貴官の名は?」

「幸水時矢だ貴官は?」

「ヴォルグ・スヴォルスキーだ。幸水時矢か…ルハーンシクの奇跡を敢行したあの英雄か。我々にとっては忌々しい存在だがな」


「ヴォルグ、その機体は何だ?戦術機なのか?」

「時矢よ、このディスガルム・オルトロスは戦術機ではない。強襲機だ。それにその機体も戦術機ではないだろう?」

「ああ、こいつはイクスドラグーン、装剣機だ。革新同盟の目的は何だ?ヴォルグ、貴官はなんのために戦う?」

「革新同盟の目的は私にも分からない。政府の考えることはな…私は無論、祖国を守るためだ。ならば時矢よ、貴官こそなんのために戦うのだ。」

「生きるためだ。軍にいなければ生きていけなかったからだ。私いや俺の能力のせいでな!」

「そうか…やはり貴官はイクスオーバーだったか…イクスオーバーの扱いは私も知っている」

「何故知っている?」

「話し過ぎたな…それでは時矢よ、また戦場でな」

「ヴォルグ、待て!」


そういうとヴォルグは通信を切ると他の強襲機とともに圧倒的な速さで離脱していった。なんとか東京を守りきったが反対にニューデリーを陥落させられなかった…


ひとまず戦闘は終了した。革新同盟の被害はラシット15隻、スカイラーグ120機に加えて神龍80機撃墜、司令本部にいた3000人だった。

対して我々日本王国軍だが轟雷及び早風がそれぞれ3機中破だった。


我々のドラグーン隊をはじめ、ヴォルグの強襲機部隊も損害が無かった。


強襲機か…かなり手強い!

玲香に強襲機についての話をした。ヴォルグのこともだ。

さらに玲香にイクスオーバーの情報を何故ヴォルグが知っていたか尋ねた。

「玲香、何故ヴォルグがイクスオーバーを知っていた!イクスオーバーの情報は世界各国で機密のはずだ。最重要な」

「少佐、ヴォルグ・スヴォルスキーですが、イクスオーバーですね。当事者なら知っていて当然ですね」


イクスオーバーとは常人では考えられない特殊能力を持つ者のことだ。私いや俺は圧倒的なタフネスが特徴だな。(本当はまだあるが…)

玲香は頭脳が特筆している。瞬間完全記憶はもちろん、カメラアイなどに加えてあまり使わないが精神操作能力持っている。

実は俺もだが…


まだ総数は分からないが一定数いることは分かっている。

ヴォルグが言っていたイクスオーバーの扱いについてだが…


確かにそうだ。現に俺も…いや今はよそう。考えたくもない。

とりあえず休もう。


――――――――――――


自由革新同盟のヴォルグだがスミルノフ大将に時矢のことを報告していた。

「大将、敵の新型機ですが、あのルハーンシク基地の攻略戦で殿《しんがり》をつとめ、我が軍の追撃隊の7割を撃破した幸水時矢が乗っていました。他にも新型がいましたのでおそらくヘルファング隊と同様の新型機部隊です。」

「そうか…ルハーンシクについては忌々しい記憶しかないな。以前見た機体が無かったようだが…」

「大将、どうやらさらなる新型機のようです。さらに性能が上がっていました。リミッター解除も使用していませんでしたので」

「ちなみに大尉、幸水時矢だが君のようにイクスオーバーなのか?」

「特別な力と言っていたのでおそらく…」

「大尉、ありがとう。イクスオーバーについてはうえには言わないが敵が新型機部隊を編成していることは報告しておく。下がっていい。休みたまえ」

「はっ!」

「イクスオーバーのことなど上に言える訳ないだろ…ヴォルグだって私が救わなければ…」

――――――――――――――――――――


日本王国と自由革新同盟の首都で行われた戦闘は瞬く間に全世界に伝わった。自由革新同盟について批判的な意見も数多くあったが、中でも日本王国軍の新型機についての話題でもちきりだった。


特に地上ではヨーロッパ連合が、宇宙では月面都市同盟が脅威に感じているとの情報も入っている。

俺としてはそうだろうなとは思っていたもののアスカをはじめとしたドラグーン隊の隊員たちはむしろ侵攻されているの日本王国なのにと怒ってたな。

玲香は危機感を感じていた。もしヨーロッパ連合と月面都市同盟が手を組めばかなり日本王国と聖グランエル公国は不利になる。玲香としてはもうひとつの宇宙の勢力であるコロニー統一連合と手を組んだ方がいいと思っているようだ。

俺もそう思うが、それにはひとつ壁がある。今から10年前に起きたコロニー統一連合と月面都市同盟及び国連軍との戦争であるいわゆる『3年戦争』の遺恨が残ったままなのだ。結果はコロニー統一連合の敗北でかなりの賠償金を払わせられた。軍備もかなり縮小させられたが、ここ2年で軍備の再拡張及び国力がかなり高まり、3年戦争以上になっている。特に日本王国とはかなり関係が悪い。


なぜなら日本王国の都市である岡山にかつて旧アメリカ合衆国によって計画がたっていた兵器を参考にしたグングニルが使用され、中心部からかなり北の方に直撃し半径15キロが消滅した。

そのため関係は最悪だ。



ここと同盟を組むにはかなりの外交能力と状況がかなり変化しないと難しいだろう。


ちなみにグングニルは宇宙空間から直径100mの杭を発射し、重力加速を利用するというものだ。核兵器と違い放射能を撒き散らさないので、被爆の心配はない。


ただかなり強力な兵器の為、国際法違反だが当時はコロニー統一連合は対象外だった。

そのため終戦条約であるオデッサ条約でグングニルの使用禁止及び放棄を明記された。

なので今のところは使用される心配はない。今のところではあるが…


政府にコロニー統一連合との同盟を提案できる政治家がいるとは思えないが…


そして戦闘から2週間たった10月24日、自由革新同盟から停戦協定を提案された。


日本王国及び聖グランエル公国はこの提案を了承、第三国であるヨーロッパ連合に仲介役を提案したが…なんとこれを拒否。


加えて各国と連合を組み、日本王国及び聖グランエル公国、さらに自由革新同盟に対して宣戦を布告した。


この展開はかなり悪い方向に進んだな…さらに悪いことに月面都市同盟とも同盟を組んだらしい。


俺や玲香が思っていたコロニー統一連合との同盟を組まないといけなくなったな…自由革新同盟も侵攻対象のようなので同盟ないし不可侵条約を結ばないといけなくなったな。



政府では会議が行われている、立花首相をはじめとした政治家の多くはかなり及び腰であり、結論が出ないまま会議が終わると思われたが…ここで一人の政治家が声を上げた。

官房副長官のポストについている楠本秋人である。彼は政治家としてはかなり年齢が若く30歳で官房副長官のポストについている。無論歴代最年少だ。


「総理、コロニー統一連合との同盟を提案します。さらに自由革新同盟と即座に停戦協定を結び不可侵条約を結びます。場合によっては同盟もです」

「楠本副長官、それはそうだが…国際世論から孤立しはしないだろうか…」

「総理、その心配は無用です。すでに敵意を向けられてますから。このままでは総理の代でこの国は終わります。ここで滅ぶか同盟を結び戦い、生き残るか…総理、ご決断を」


数分考えて総理は決断を下す。

「わかった。コロニー統一連合のエルドレッド大統領に至急連絡してくれ!同盟を組みたいと。自由革新同盟についてはオデッサ条約を締結し、即座に不可侵条約を提案してくれ。責任は私が全て取る」


10月24日に自由革新同盟と日本王国及び聖グランエル公国との間にオデッサ条約が締結され、翌25日にはコロニー統一連合との同盟が成立した。


後は自由革新同盟との不可侵条約の締結だが、自由革新同盟の方から同盟の提案をされた。

意外ではあったが、ひとまずこれで日本王国は大丈夫だが、世界大戦が確定したな…


動きが速すぎる…ヨーロッパ連合にはここまでの迅速さは無かったはずだ…

さては月面都市同盟だな…あそこには大統領のユリアナをはじめとして政治家の質はこの世界で一番といわれているぐらいだからな。

特に首相のマリアーナはあの中で一番能力が高い。月面都市同盟の政治家自体平均年齢が若く、マリアーナにいたっては私と同じ22歳だ。まぁ月面都市同盟の被選挙権は参政権と同じ18歳だから

一概には言えないが…


ともかく日本王国をはじめとした同盟国及びヨーロッパ連合を中心とした連合国の全面戦争、いわゆる『救聖戦争』が開始されるのである。


この戦争の結果がどうなるか、今の俺たちには分からない…



次回から救聖戦争編が始まります。

ここからが第一章です。

毎日投稿できるようにがんばります。

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