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降臨的冥王(独壇)

 

 巨人が暴れ回る戦場に、変化が起こる。

 こん棒を振り回し、望むがままに殺戮を繰り返していた巨人だったが、再び振り下ろされたこん棒は地面に激突することなく何者かによって阻まれた。


「っへ! こりゃなかなか……えげつねぇな」


 レイグは、頭上に掲げた大剣で巨人の振り下ろしたこん棒を正面から受け止めたのだ。

 レイグの足下に出来た広いクレーターが、巨人の力の大きさを物語っている。


 そんな時に、辺りに響く風切り音。


 目にも止まらぬ速さで跳躍したシエラが、刀を振るう。

 巨人の体を利用し登り、その体の至る所に刀を振るっていく。

 "代償"によって上昇したシエラの能力値は、現在巨人と退治している冒険者の中で最も高いと言える。

 そんなシエラの連撃は――


 巨人の全身を切り刻んだ。


 その巨体の体勢が崩れた巨人はここで初めて、一歩、二歩と後退した。


「す、すげぇ。巨人を押し返した……」

「何者だあの二人……」


「今が好機(チャンス)だ! あの2人に続くぞぉ!」


 声を上げながら、この好機を逃すまいと冒険者達が巨人に総攻撃を開始する。


 巨人も、自身に群がる冒険者を蹴散らすべくこん棒を振り回すが、シエラによる攻撃は見た目以上に巨人にダメージを与えていた。


 レイグとシエラの参入で、巨人と冒険者の戦闘は加速した。



 ~



 巨人とは少し離れた所、多くの天使達の攻撃と、空に浮かぶ精霊の魔法に晒され命を奪われた冒険者達の死体が数多く転がる場所がある。

 しかし、その場所では未だに激しい戦闘が繰り広げられている。

 目にも止まらぬ速さの天使の斬撃と、超火力の精霊の魔法が降り注ぐこの場所で、大立ち回りをする冒険者。


「あっは! これ程までに楽しい場所でしたか! 素晴らしい! 素晴らしいです!」


 数多くの天使を相手に、互角以上に渡り合う一人の冒険者。

 いつ死んでもおかしくない状況にありながら、終始笑顔を崩さない余裕を持つ。着物を靡かせながら舞い、戦う美女。天使達の斬撃を、その手に持つ"大鎌"で弾く。


 現勇者パーティーの一人。アゼリア・ユライオンである。


 アゼリアは、天使達と激しい戦闘を続けながらも、上空の精霊の警戒を怠ってはいない。

 空から降り注ぐ、精霊の脅威的な魔法にも即座に反応し、避ける。


 そんなアゼリアの戦闘を、他の冒険者達はただ遠目から見守ることしか出来ないでいた。


「……お、おいミルシェ、これは……どういう状況だ?」


 他の冒険者同じく、アゼリアを見守っていたミルシェに語りかける声。


「あら? 貴方、ラズね? "流星"の……」


 語りかけたのは、冒険者パーティー"流星"の男、ラズ。

 青い髪をして好青年である。

 彼の後ろには、"流星"のメンバーである4人の冒険者達の姿もあり、この場に冒険者パーティー"流星"が全員揃っていた。


「どういう状況も何も……見ての通りよ。アゼリアが一人で戦ってる」


「か、彼女は一体……何者なんだ?」


「……アゼリア・ユライオン。一応、私達勇者パーティーの一人……ということになるのかしらね」


「――!? 彼女が……噂に聞く単独で100階層に至った冒険者か……」


 既に、アゼリアの名は上層組の冒険者に知れ渡っている。

『単独で100階層へ至り、新たに勇者パーティーへ加入した冒険者。そして美女』

 その衝撃的な事実は、全ての冒険者を驚かせた。


「どうして君はそこで見ているんだ? 君と俺達が彼女に加勢すれば、異空間主を討伐出来るんじゃないのか?」


 ラズのその言葉に、ミルシェは小さく肩を竦める。


「暫くは一人で戦いたいんだってさ。それに、精霊の集団魔法には、アゼリアも成す術が無いらしくてね。私はその時の為にここで待機しているのよ」


 冒険者達が異空間へ転位した時に浴びせられた、超広範囲破壊魔法。

 精霊達が集団となって行使するその魔法に対処出来るのは、この場にいるミルシェの詠唱魔法と、遠くにいるフィリアの強化守護魔法のみだった。


 その事をラズに伝えてから、ミルシェは更に言葉続ける。


「それに貴方達、あそこに割って入ることが出来る? 無理でしょ? ソレが出来るならとっくに他の冒険者達もそうしてる筈よ」


 加勢に入っても、ただアゼリアの邪魔になるだけ。

 ミルシェはそう言っていた。


「ただ……」


 ラズの背後にひっそりと立つ、"流星"のメンバーの一人である少女に目を向けながら、ミルシェは言った。


「"流星のお姫様"がやる気を出せば、アゼリアの助けになれるかも知れないけどね」


「……それは無理だ。ティアが本気を出すことはもうない。それはミルシェも同じだろ? 実際、君はさっきからしきりに周囲を気にしている。まるで誰かを探しているように……」


「……別に。とにかく、アゼリアはあのままで良いのよ。本人も楽しそうだしね。多分、飽きたら帰ってくるわ。その時に私達は戦えるようにしておくだけよ」


 未だに楽しそうに戦闘を続けるアゼリアの姿を、他の冒険者達は見守ることしか出来ない。


 今は、まだ。



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