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降臨的冥王(激区)

 

 ~~~


 50階層大広間から転位で異空間へやって来た上層組の冒険者達もまた、ロワ達同様に苦しい戦闘を強いられている。


 夜空に浮かぶ多くの精霊が行使する魔法は、冒険者達を無差別に殺戮し、巨人の振るうこん棒では、数え切れない程の冒険者達が潰された。

 さらには、素早い動きで冒険者達を翻弄し、魔法や剣技を駆使して戦う天使達が、冒険者を苦しめる。


 精霊、巨人、天使。

 そんな3種の異空間主が入り交じって戦うこの場所は、まさに地獄と言えた。


 しかし、この場にいる冒険者達は皆、"上層組"だ。

 異空間主の強さを知った上で、この場にやって来た者ばかり。

 多くの死者や負傷者を出しながらも、互いに連携し、何とか"戦闘"と呼べる状況を維持していた。


「まずはこの巨人をやるぞぉぉ!」

「おぉ!!」


 掛け声と共に、多くの冒険者が散り散りに巨人へと走る。


 この状況にあって、固まって行動するなどと言う愚策を犯す冒険者はこの場には存在しない。

 しかしそれでも、巨人がこん棒を叩きつけると幾人かの冒険者の命は確実に奪われる。


「怯むんじゃねぇ!! 立ち止まるな!!」


 そうして、巨人の足下までたどり着けた冒険者達が、少なからずのダメージを巨人に与えては、その命を散らす。


 別の場所では、天使達と混戦状態の冒険者達。

 数で勝る冒険者達だが、高い生命力、高い攻撃力と魔力を併せ持つ天使達に、その数は確実に減らされている。


 そして。


「伏せろおぉぉぉおおおおお!!」


 空の闇を割るように、夜空から閃光が降り注ぐ。


 精霊の行使した魔法による閃光が、冒険者達の立つ大地を襲い、焼き尽くす。

 まるで昼間のような明るさに包まれる異空間に、多くの冒険者の悲鳴が響き渡った。


「おぉ、盛り上がってんじゃねぇか」


 戦場から少し離れた場所で、戦闘を見守っていた男が光に照らされて、左耳の3連のピアスがキラリと輝いた。


「なぁシエラ。今、どれくらいの冒険者が戦って、それで死んでいってるんだ?」


「さぁ? この場所で戦ってる冒険者は500人はいるんじゃない? 死者は……200人くらいかしら?」


 その言葉を聞いた男は口角を吊り上げ、笑う。


「ははっ! そりゃいいな! ようやく俺も本気でヤれる時が来たみたいだ!」


「はいはい。うっかり死なないように気を付けることね」


 背中に担いだ"戦鬼の大剣"を地面に突き立てる男。レイグだ。

 レイグは大剣に魔力を込め、"適能"を発動させる。


 レイグの持つ適能、"修羅"。

 戦場の"熱"と"血"の量によって、"戦鬼の大剣"の攻撃力は上昇する。

 この異空間で行われている戦闘は、まさにレイグにとっては絶好の機会であり、真の意味で全力を出せる局面であった。

 敵味方入り乱れる戦場でこそ、レイグは真価を発揮する。


 一方。


「おいシエラ。見てて分かったろ? 出し惜しみしてる余裕はねーぞ?」


「……………」


 レイグの隣に立つ美女、シエラ。

 小さくため息を吐いてから、腰に差した刀を抜いた。


「……そうね。……10センチ、いや15センチって所かしら」


 戦場に目を向け、冒険者達を蹂躙する異空間主を値踏みするかのような口調。

 抜いた"羅刹の刀"を逆手に持ち、自らの脇腹に刃先を向けた。


「――ッ! くぅぅ!!」


 そして、勢い良く刀を脇腹に突き刺し、横に引き裂いた。


 脇腹から流れる血と、激しい痛みにシエラは苦悶の表情を浮かべている。

 シエラの脇腹には、15センチ程の深い裂傷が刻まれた。


 が、伴う痛みと、失われていく血とは裏腹に、シエラの魔力は増幅していく。


 シエラの持つ適能、"代償"。

 自傷して得た痛みと、失われていく体力と血液を引き換えに、シエラは自身の全能力値を爆発的に増幅させる。


「いつ見ても、えげつねぇな」


「……ふふ。あなたもやってみる?」


「……勘弁しろよ。そんなことより、さっさと始めようや」


「ええ……私の体力にも限りがあるものね」


 2人は、轟音と地響きの鳴り止まぬ戦場へ駆けた。


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