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降臨的冥王(衝突)

 

 ~~~


 少し遠くの空に出現した巨大な魔法陣から発せられた光の柱を、大地から吹き荒れる黒い嵐が正面から受け止めている。


 あれはミルシェの極地級殲滅魔法"黒嵐"だ。


 やはりミルシェも"大規模転移"には参加していたようだな、後はリウスとケイルが参加しているのかが気になるが、俺の予想ではアイツ達は参加していないだろう。

 ま、どうでもいいが。


 そんなことよりも……。


 今、ゆっくりと空から舞い降りたこの"異空間主"を、どうやって攻略するかの方が大切だな。


 姿は人間型。

 全身が白く、各所に金色の装飾が施された美しい外観。

 手足は細く、両手に金色の槍を持つ"天使"。


 いや、こいつは俺達が"異空間主"と呼んでる魔物。

 "天界の使者"だ。

 前回の"大規模転移"でも出現していたのを今でも憶えてる。


 その"天使"が、神々しい雰囲気を振り撒きながら俺達の目の前に……降り立った。


 前回はこの"天使"は3体出現していたが、今回はどうなんだろうか?


 見た限りではこの1体しか確認出来ないが、ミルシェの方にでも出現しているのかも知れないな。

 "巨人"の姿や"精霊"も恐らくどこかに出現している筈だ。


 そして厄介なことに、少し遠くに"純竜種"が3体出現しているようだ。

 特にヤバそうなのが、空に留まったままのあの黒い奴。


 アレ……やばくない? めっちゃ強そうだ。

 少しちょっかいを出してみたい気もするが、まずはこの天使だな。


 とは言え……。


「フィリア、お前はあの"純竜種"の方を助けに行ってやってくれ」


「えぇ!? いや、でも……」


「こっちは大丈夫だ。流石に"純竜種"3体はヤバイだろ?」


 流石にヤバ過ぎる。

 フィリアはこっちよりも、"純竜種"と戦闘に突入した冒険者達の手助けに向かってもらうべきだろう。


 しかし、フィリアはやはり俺のことが心配らしく、今にも泣き出しそうな表情だ。


「大丈夫だって。ユティの強さはフィリアも知ってるんだろ? そのユティは俺から絶対に離れないらしいぜ? な?」


「うん! 勿論だよ。絶対にロワ君からは離れないからね」


「ほらな? だから早く行ってやってくれ」


「うぅ……わ、わかった! 気を付けてね! 2人共!」


 ようやく納得してくれたフィリアは、チラチラと何度もこちらを振り返りながら"純竜種"が暴れ回る戦場へ向かって行った。


「エリス。君もフィリアと一緒に行ってやってくれ。フィリアには魔力薬が必要だ」


「え? ……わ、わかりました。では、コレを渡しておきます」


 俺とユティに、上級魔力薬を1つずつ渡してから、エリスもフィリアの後を追い、走って行く。


「……さて」


 思わずそんな声が溢れる。


「久しぶりに2人だな。ユティ」


 相も変わらず、俺の腕にぴったりと引っ付いて離れないユティへ語り掛けると、ユティは愛おしそうな瞳と表情で見つめてくる。


 その顔やめて。マジで、ここが"異空間"であることを忘れてしまいそうになるから!


「……もう絶対に、ロワ君を傷つけさせない。誰にも……」


 その美しい瞳を金色に輝かせ、ユティはゆっくりと俺の腕から離れていく。

 そして、目の前の"天使"を睨み付ける――


 ――と思った瞬間。


 辺りが閃光に包まれた。


 その閃光は、目の前の"天使"が放った物で、俺とユティを含む他の冒険者達をも滅ぼすべく金色の槍から放たれた"魔法"だ。


「うわっ!」

「なんだぁ!?」

「ヤバい! 逃げろ! 早く!」


 などと、周りの冒険者達が騒がしい。


 無理もない。

 この閃光が孕む魔力は、圧倒的な物であり、この魔法が自身に直撃でもしようものなら、間違いなく全身は吹き飛ばされてしまうだろう。


 なので、この場から逃げ出す。という選択肢は間違いではない。

 この"天使"も、どちらかと言えば"純竜種"よりも脅威度は高い。

 "純竜種"よりも魔力が高く、様々な魔法を使いこなし、剣技までも使いこなす"天使"は、それほどまでに危険な存在なのだ。

 勿論、あの黒い竜は除外だが。


 そして、魔法に限って言えば、その"天使"よりもヤバいのが"精霊"だ。

 この"精霊"の魔法に対抗出来るのは、ミルシェと……ユティくらいだろうな。


 なんて冷静に敵戦力の分析を改めて行っていると――


 ――閃光が消え失せた。


 俺達冒険者を包み込み、これからその存在を葬ろうとしていた閃光は、何の前触れもなく消え失せ、今度は静寂が包み込んでいる。


 そして、天使から少し離れた地面に、金色の槍が突き刺さり、そのすぐ近くに白く細い腕がドサリと落ちる。


「ロワ君を傷つけようとする者は、私が許さない」


 金色の瞳を輝かせたユティの美しい声が響き渡る。


 ユティが"神閃"で天使の腕を切り落とし、魔法の発動を阻止したようだ。


 やっぱり、ユティの奴かなり強くなってるみたいだな。


 "剣技"の威力も練度も上がり、魔力消費も少なくなっている。


 しかし相手は"異空間主"。

 簡単に倒せる相手でもない。

 その証拠に、この天使は腕を切り落とされたと言うのに表情一つ変えてもいない。


 冷静にユティの強さを分析している。と言った感じだ。


 と言うか。


 "天使"の腕の切り口に、光が集まっている。


 やがてその集まった光が、腕に変わる。

 まるで何事もなかったかのように振る舞う天使。

 引き寄せられるように、金色の槍が天使の下へと舞い戻っていった。


 やはり、"異空間主"の討伐は簡単な物ではないらしい。



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