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閃光的紫色(直前)

 

 新たにエリスを仲間(パーティー)に加えた俺とユティは、まっすぐに巨搭を目指し歩いている。


 別に巨搭の攻略を進めようという訳ではない。


 確かめたいことがあり、20階層の広間を目指しているのだが、どうやら広間まで行くまでもなくソレは確認することが出来そうだ。


「広間から溢れる位に光が強くなっているな……」


 誰に言った訳でもないが、思わずそんな言葉がこぼれた。


 視線を向けた先の巨搭の広間から、これでもかと言う程に紫色の光が溢れている。


 1階層から出発するときに出現した"紫"魔法陣が、ついにここまでの輝きを放つようになっていた。


 もう間もなく、大規模転移は発動するだろうな。

 広間から溢れる程の輝きになったのなら、遅くても後2日かそこらだろう。

 正確な時間が知りたい、念のためにこのまま広間まで向かうことにしよう。


「"異空間主(レイドエネミー)"かぁ。またロワ君と戦えて嬉しいよ! 今回はユティアちゃんもいるから、1体くらいは討伐出来るかもね」


 俺と同じく、巨搭に視線を向けていたフィリアが言う。


 そう。

 今回はフィリアも一緒だ。

 本来なら、フィリアは50階層から参加するつもりらしかったのだが、俺と共に巨搭を上がりたいと言うフィリアを説得するために俺が誘ったのだ。

 異空間主戦が終われば、フィリアも満足して50階層へ帰ってくれるだろう。という狙いが少なからずあり、妹的存在のフィリアの頼みを出来るだけ聞いてやりたい俺の苦肉の策でもある。


 そして何より……フィリアの"支援力"を俺は期待しているのだ。


「でもミルシェは大丈夫か? 心配してるんじゃないか?」


 ただ、フィリアを連れ回したらミルシェがうるさいかも。

 そんな懸念が少し。


「大丈夫だよー。ゆっくりしてこいって言ってたし、ミルシェちゃんも多分"大規模転移"には参加するだろうけど、ミルシェちゃんなら私がいなくても絶対大丈夫でしょ?」


「まぁアイツは火力オバケだからな……」


 ミルシェのあの超火力なら、万に一つもないだろうな。


 久しぶりにミルシェに会いたい気にもなるが、今はやめておこう。

 フィリアに50階層へ呼びに行ってもらえば、簡単に会うことは出来るが、リウスとケイルが少し厄介だしな。


「ふふっ。ミルシェちゃんにロワ君のこと話したらどんな顔するかな。きっとビックリするよ、嬉しくて泣いちゃうんじゃない?」


 どうやら、上層組の間では俺が死んでいることになっているらしい。

 どうせリウスとケイルが流した噂だろうが、ミルシェだけは俺のことを心配し続けてくれていたようだ。

 また会った時にでも謝っておこう。


「エリス、大丈夫か? もうすぐ巨搭……と言っても広間だが、嫌なら待っていても構わないが」


 もう間もなく巨搭20階層の広間だ。

 "異空間"で仲間を失い、それが原因で巨搭から距離を取っていたエリスに問いかける。

 今の広間には、その"異空間"への転移を行うための"紫"魔法陣が広がっているため、エリスには辛いとかも知れない。


 しかし。


「……大丈夫です! 私も冒険者ですから!」


 凛とした態度でキッパリと言い放つ。


 既に覚悟は決まっているらしい。


 と言うか、この中で今最も戦力に数えられないのは俺だ。


 ユティとエリスは50の"記録"持ち。

 フィリアは言わずもがな。


 ……そして俺は"無印"。

 あまり偉そうなことを言うのはやめておこう。


 なんて思いながら、俺達は巨搭に到着し広間へと足を踏み入れる。


 外からでも分かる程の光源はやはり"紫"魔法陣の物だ。

 広間の床一面に広がる魔法陣が、眩しい光をはなっている。光の強さから察するに、"大規模転移"が発動するのは2日後くらいか……。

 と言っても、俺でも完璧な時間は分からない。

 今だって、いつ転移が発動しても良いように既にこの広間には多くの冒険者達が待機している状態だ。


 少なくとも今日、ということはないだろうが……念のために明日中には俺達も広間で待機している方が良いだろう。


「どう思う?」


 一応、フィリアにも訊いてみることにした。


「んー。今日ではない……かな? 明後日……もしかしたら明日かも」


 俺のその一言だけで、フィリアは質問の意味を理解してくれた。

 そしてフィリアも、概ね俺と同意見のようだ。


 "紫"魔法陣を真剣な瞳で見つめるフィリアとユティ。

 エリスは少し複雑な気持ちのような表情。


「よし、なら今日は街で必要な物を揃えよう。"上級魔力薬"はいくつか持っておかないとな」


 冒険者にとって魔力は命みたいな物だ。

 "異空間主"との戦闘は激しく、苦しく、そして長い。

 魔力薬はいくつ持っていても決して多すぎるということはないのだ。

 まぁ、持てる量には限度はあるが。


 なんて一人で考えていると、フィリアがジットリした視線を向け、口を開く。


「でもロワ君、お金持ってないよね? 無一文だよね? 寧ろ私に借金してるよね?」


 厳しい現実だ。


「すまん!」


 どうやら、俺の借金が増えることが確定したらしい。



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