表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/74

女神的冒険者(ユティア・スターレ)

 

「じゃ、俺達はここらでお別れとさせてもらうわ」


「「えっ!?」」


 高級旅館"陽射し亭"。その目の前に転移し、これからロワを治療しようと言う時のレイグの突然の言葉だった。


 当然、ユティアとフィリアは驚く。


「もともと俺達は、ユティアの嬢ちゃんの強さに興味があって同行してただけだしな」


「せめて……ロワ君と会ってもらえませんか?」


 共に"純竜種"という強力な"階層主"の討伐を果たしてくれた2人が、まさかロワの治療を見届けずに去ろうとするとは思っていなかったユティア。


 ロワとは仲良くなってくれそうな2人だっただけに、残念そうな表情を見せている。


「"王者のロワ"か。確かにユティアの嬢ちゃんと同じ位に興味はあるが……」


 そう話すレイグの表情は楽しげだ。

 だが、どうやら今は他にやるべきことがあるらしい。


 レイグが一層笑みを深くしながら続きを話し始めた。


「もうすぐらしいぜ? "紫"魔法陣の転移が行われるのは……もう間近って話だ」


 ユティアは思い出した。


 レイグとシエラは"変人"だ。

 初めて会った時もユティアはそう思ったが、今改めて、それを思い出したのだ。


「そ、そんなに楽しみなんですか?」


「"超弩級空間主(レイドエネミー)"も勿論楽しみだ。あと、さっきのユティアの嬢ちゃんの戦いの見ちまったら、俺達は転移が発動するまでの間も、巨搭に入っていたくなっちまったわ」


 明るく笑いながら話すレイグの隣で、シエラは微笑んでいる。

 どうやら2人の総意らしい。


 2人にとって今一番大切なのは、"戦闘"のようだ。

 そしてそれを触発したのは他でもない、ユティア自身だった。


「ロワ君も大概変わってるけど、2人もかなり変わってるよね」


「ハッ! 猫かぶり賢者に言われたくねーよ」

「うふふ」


 強力な"階層主"を共に討伐しただけあって、皆は既に打ち解けている。

 それなのに、もう解散なのか。と、ユティアは心底残念に思ってしまう。


 しかし、


「ユティアの嬢ちゃんも、"紫"魔法陣での転移には参加するんだろ? じゃぁすぐにまた再会するかもな。……それに」


 またしても、レイグは不敵な笑みを見せる。


「近々に50階層(スカイアベル)の"巨搭闘技場"で大きな大会もあるらしいぜ? 俺達は勿論出場するつもりだ。……その"王者様"も出場するんじゃねーか?」


「闘技場……」


 ユティアは考えてみた。

 ロワの性格からして、その"闘技場"とやらは非常にロワの好きそうな催しではあるが、ロワはまだ"適性武具"を取り戻せていない。

 果たして、"適性武具"を後回しにしてまでその"闘技場"に出場するのか。

 正直、微妙だった。

 だが、あのロワのことだ。それでも出場することも充分に考えられる。


「ま、そんな訳で、とにかく俺達は行かせてもらうわ。短い間だったが、楽しかったぜ?」


 そう言いながら、レイグが右手を差し出してくる。

 それをしっかりとユティアは握る。


「はい。本当にありがとうございました」


「まさかユティアの嬢ちゃんの強さの秘密が、彼氏への愛による物だったとはなぁ!」


「「「――ッ!!」」」


 わざとらしく大きな声を出すレイグ。


「ちょっとユティアちゃん? どういうこと?」


 フィリアの冷たい視線がユティアに突き刺さる。


「かか、彼氏だなんて……そんな、私は。私はロワ君の物なだけで……その、彼氏って訳じゃ。いや、でも、その……確かにロワ君のことは……その、"適能"にもなっちゃう程に……その。……………あう」


 ほんの少し、金色の瞳を輝かせながら、視線をオロオロと泳がせるユティア。


「「…………………………」」


 そのユティアの様子が何よりの証拠だと、ユティア以外の4人は理解した。


「ふふ。それじゃユティアちゃん、45階層でのお礼……まだ言えてなかったわね。あの時は本当に助かったわ。ありがと」


 そんな微笑ましいユティアへの助け船か、シエラが美しい笑みを浮かべながら一歩前に出て、同じく握手を求めてくる。


「あう……。いえ、私も本当に助かりました。またお会いした時も、よろしくお願いします」


 その内訪れるであろう再会に期待して、ユティアは2人と別れの挨拶を済ませる。

 フィリア、エリスも同じく軽く挨拶を交わすと、2人は巨搭に向かって歩いていく。


 どうやら、本当に今から巨搭を上がるらしい。

 あれだけの"階層主"と戦った直後だと言うのに、どれだけの戦闘好きなんだと、呆れながらも感謝の気持ちで一杯になるユティアは、2人の背中が見えなくなるまで見送っていた。


「じゃぁユティアちゃん、行こうか。このために、ユティアちゃんは1人で巨搭を上がっていたんでしょ?」


 2人が見えなくなった景色を見つめるユティアに、掛けられるフィリアの言葉。


 ロワを助けるために20階層から50階層まで駆け上がった。

 そして"賢者"と出会い、20階層に帰還し、治癒を施してもらったが……効かず。

 20階層の最奥の広間で、"階層主"を討伐したことでようやく手に入れた、ロワを救える手段。


 早かったと言えばそうだが、その道のりはとてつもなく長かった気がするユティアだった。


「……はい。行きましょう」


 ユティアは、"陽射し亭"へと入っていった。



感想、評価、是非お願いします。執筆の励みとなります。


少しでも暇つぶしになると思ったのなら、ブックマークしていただけると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ