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瞬間的絶望(死の予感)

 

 迸る魔力は圧倒的であり、内に込められている物は明確な"怒り"だ。

 そんな、この場にいる冒険者達が目にしたことも無い程の攻撃的な魔力を、全身から放出しているユティアの敵意は"勇者"にのみ向けられている。


 眩い輝きを放つ魔力で、酒場は埋め尽くされていた。


 次第に、その魔力は"勇者"の足下へと収束されていく。


 勇者の足下に集まった魔力は、形を変え、幾何学的な模様を写し出す。


 ――人間1人程度の大きさの"魔法陣"だ。


 "勇者"の足下に出現したソレは、明確な敵意を孕んだ魔法陣であり、主の定めた『罰を受けるべき愚かな存在』を滅ぼすべく、眩い輝きを放ち始める。


「な……なんだ、これは。馬鹿な……待てっ」


 この場にいる全ての者が、目の前で起こっている現象に驚きユティアの魔力に恐怖している中で、明確な"怒り"と"敵意"をユティアから向けられている"勇者"は、周囲の者達とは比べ物にならない程の恐怖に襲われている。


 自身の足下に出現した"魔法陣"に込められている魔力は、まさに途方も無い物であり、そんな"魔法陣"から放たれようとしている"魔法"は、到底抗える物ではない。


 全冒険者の頂点に君臨()()()()勇者パーティーのリーダーである、"勇者リウス"は、即座に理解したのだ……"適性"の"差"を。


 足下の魔法陣が輝きを強くした瞬間、"勇者"は――

 ――死を覚悟した。










 しかし、


 この場には、こと"魔法"に関しては、他の追随を許さない冒険者が2人、存在している。

 その2人、"魔女"と"賢者"も即座に理解していた。


 これは、

 ――"勇者"が容易く葬られる程の"魔法"だ。と。


 流石に、自分達の目の前で、今は同じパーティーの仲間である"勇者"がみすみす殺されるのは見過ごせない。


 ――何とかしなければ。


 そう思った"魔女"が、咄嗟に声を上げる。


「フィー!!」


 "魔女"が声を上げた時には、既に"賢者"は動いていた。


「――ッ! "魔封殺"!」


 "魔法"に対して行う、"封印魔法"を"賢者"は行使する。


 これまで、あらゆる"魔法"の発動を阻止してきた、その"封印魔法"だったが、


(そんなっ! 効果がない! なんて魔力っ……なら)


 100階層にまで至った"賢者"の魔力ですら、ユティアは上回っていた。

 圧倒的な魔力の前では、魔法は本来の役目を果たすことが出来ない。よって、"賢者"のその"封印魔法"は不発に終わってしまう。


「"思考強化"、"魔力強化"、"封印強化"。――ッ!」


 "勇者"の足下の魔法陣が輝きを強くしていく中、"賢者"は焦りながらも自身に対しての"強化魔法"を重ね掛けしていく。


「――"魔封殺"!!」


 充分に"強化魔法"を施してから、もう一度"封印魔法"を行使する"賢者"。


 最早、魔法陣の輝きはこれ以上無いほどに強く、魔法は発動する瞬間と言えた。


 しかし、"賢者"の行使した"封印魔法"は、まだ届かない。


 それを理解した瞬間、"賢者"は……自身の"適能"を利用した。


「――"魔法強化・極"」


 "賢者フィリア"の持つ"適能"の一つである"理解"によって、フィリアは、自身の魔法の対象を縛られない。

 自分で行使した魔法にさえも、フィリアは"強化魔法"を施す。


 魔法に対して行った"強化"によって、フィリアのその"封印魔法"は、ユティアの魔法を寸での所で消滅させるには充分な物にまで到達した。

 が、少しばかり……遅い。


「――――」


 しかし、その威力を限り無く封殺することには成功する。


 それでも、魔法陣から放たれた閃光は眩く、"勇者"を容赦なく飲みこんだかと思えば、"勇者"が力無くその場で崩れ落ちた。


「「「…………………………」」」


 "無双者"を含めた多くの冒険者達が息を飲み、白眼を剥き、泡を吐きながら、股間部分から液体を流し気絶した"勇者"だと思われる冒険者を見つめていた。


「チッ。生きてやがる」

「あら残念」


 という、レイグとシエラの呟きはユティアの耳にだけ届く。


「はぁ……はぁ……。きっついなぁ、もう。勘弁してよー」


「大丈夫? フィー?」


 高位魔法の連続使用。そして"適能"までをも全力で利用した超強化魔法の使用は、流石の"賢者"でも堪えたようだった。


 肩で息をしながら座り込む"賢者"に、"魔女"は心配そうな表情を浮かべている。

 "魔女"に差し出された"魔力薬"を受け取り、すぐに飲み干してしまう程に、"賢者"は魔力を消費してしまっていた。


 そして、"怒り"を魔力によって発散したユティアは、冷静さを取り戻す。

 爛々と輝いていた金色の瞳が、いつもの優しい色を浮かべると、「……あ」と呆けたような声を出していた。


「貴女も……大丈夫?」


「ご、ごめんなさい! 私! つい、カッとなっちゃって!」


 ユティアのことまでも心配する"魔女"に、ユティアは全力で謝罪する。

 勿論、その謝罪は勇者パーティー全員に対しての物だった。


「あはは。いいよ別に、今のはリウス君が悪いよ。寧ろ良い気味なんじゃないかなぁ」


 と、"魔力薬"を飲み干しすっかり調子を取り戻した"賢者"が、情けなく気絶している勇者を見ながらそう話している。

 勇者の酷い有り様を見て、「うわぁ……」と顔を歪めていた。


「じゃ、急いでるんでしょ? 早速20階層へ向かおうか」


 と、"勇者"のことなど気にも留めていないのか、"賢者"が言うが


「ふざけんじゃねぇぇぇぇええええ!」


 という怒声が響き渡る。


 皆が視線を向けた先には、"一騎当千の槍"を肩に担いだ"無双者"が、怒りの形相を浮かべていた。


 ズカズカと、大きくて荒い足取りでユティアへと迫る"無双者"。


 しかし、


「どけよミルシェ! その女を許す訳にはいかねえ!」


 "無双者"とユティアの間に割って入るように"魔女"が立ちはだかる。


「アンタも馬鹿ね。今のを見てなかったの? リウスが悪いでしょどう考えたって。ってゆーか、アンタこの娘に勝てる訳? 無理でしょ? 勿論、もう私達は助けないわよ?」


「……ぐっ」


 紫色の瞳が真っ直ぐに"無双者"へ向けられた。

 絶世の美女が放つ冷たい言葉に、"無双者"は言葉を詰まらせる。

 今の一部始終を目撃していた"無双者"も、自分とユティアの"適性"の差、実力の差を思い知らされている。


 反論など出来る筈も無く、"無双者"は舌打ちだけでせめてもの抵抗を見せる。


「勝手にしろ!」


 と、ソレだけ言って、気絶している"勇者"の所へと踵を返す。


「あちゃー。……じゃ、ミルシェちゃん。ちょっと行ってくるよ。出来るだけ早く帰ってくるからね」


「ま、ゆっくりでも構わないわ。どうせこんな状態じゃ、巨塔には暫く入れないしね」


 情けなく気絶している"勇者"と、怒り狂いながりも負けを認めてしまった"無双者"を見ながら、"魔女"が笑いながら言う。


「あ、あの……本当にごめんなさい」


 まさかこんな事をしでかすつもりは無かったユティアが、申し訳なさそうにもう一度謝罪するが、「いいからいいから」と"賢者"に酒場の外へと押し出されていく。


 そんなユティア達を"魔女"は笑いなが送り出す。


 こうして、ユティアはようやく"賢者"と合流を果たした。


 ~


「本当にありがとうございます」


 酒場を後にしたユティアは、改めて"賢者"に礼を言う。


「気にしないで」という"賢者"の言葉を聞き、安心するユティア。


 "魔女"と"賢者"には迷惑を掛けてしまったが、ユティアにとって最も大切なのはロワである。

 ならば、確かめなければならない。

 "賢者"をロワに逢わせる前に、確認しておくことがある。


「――フィリアさん」


 大広間へ向かって歩いていた足を止めて、"フィリア"の瞳を真っ直ぐに見つめるユティア。


 その金色の瞳が、僅かな輝きを放つのを"フィリア"は見逃さない。


「――ロワ君、"王者のロワ"のことを……貴女はどう思っていますか?」


 唐突に浴びせられたユティアの言葉は、"賢者のフィリア"の表情を真剣な物にさせた。


「何を……言ってるの? どうして君がロワ君を――」


 ユティアは、1人の女としての"フィリア"に、質問していた。



いつも読んでくれている方はありがとうございます。


そして、今来たよ。という方もありがとうございます。


良かったら、評価等をしていただけると今後の執筆の励みになりますので、是非よろしくお願いします。

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