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驚愕的適能(女神)

 

「――ッ! ハッ! さっきの魔法もそうだが、半端ない女だな」


「えぇ。それにあの"剣技"。いったい何者……」


 46階層を走るレイグとシエラが、呟くようにして話す。

 その2人の視線の先には、速度を落とすことなく魔物や魔獣を屠りながら走るユティアの姿がある。


「おいおい。アイツまさか、ここまであの調子で上がって来たってのかよ。どんな魔力……いや、おそらく"適能"か」


 確かに、"女神"の適性を持っているユティアの魔力は多大。

 それを知らないレイグだったが、先の階層主との戦闘と、今、彼等の目の前でのユティアの戦いぶりを見て、ユティアの持つ魔力量が並大抵の物ではないことを感じ取る。


 しかし、魔力量だけでは説明できない部分もある。


 レイグの目から見て、ユティアの動きには無駄が多いと感じる部分が少なからず存在していた。

 まだ冒険者としての経験が多くないユティアなら当然なのだが、その無駄な動きでも、魔力と体力は必ず消費している。


 なのに、ユティアの顔には少しばかりの疲労感が浮かべられている程度だ。

 普通なら、あり得ない運動量と魔力消費。

 並の冒険者なら、とっくに"魔力欠乏"の筈。いくら魔力量が膨大だと言われても、納得ができない。


 だが、"適能"と言われれば納得する。


 不可能を可能にするのが、"適能"だ。

 冒険者の力を大きく上昇させる物や、補助、回復など、他者にはその効果が分からない"適能"は、似たような物はあれど、同じ物は決して存在しないと言われている。


 冒険者の持つ"適能"の数だけ、その効果は存在するのだ。


「ハッ。面白ぇ! ついてってやるよ!」


 ユティアに計り知れない興味を既に抱いていたレイグは、更にユティアの持つ"適能"にも興味を持つ。

 そして、少し前で行われた45階層での話を思い出す。


 ~


「ちょっと待ってくれ。今のは"魔法"だろ? さっきは"剣技"も使ってただろ?」


 45階層から先へ通じる門が開かれ、そこを急ぎ通ろうとするユティアをレイグとシエラが呼び止める。


「貴女いったい何者? "剣技"を使う冒険者が、どうして"魔法"まで扱える訳?」


 おそらく、誰もが抱く疑問ではあるが、ユティアはその質問に答えることが出来ない。


 ――自分でもわからないからだ。


 ユティアとしては、『使えるのだから仕方がない』としか言えない。

 おそらく、自分の持つ"女神"の適性による物だろう。程度にしか分かっていない。

 しかも、それはロワが言っていたことであり、あのロワでさえその程度しか分からなかったことだ。


 自分のことではあるが、あのロワが分からないことを、どうして自分が分かるのか。と、ユティアは思っている。


 だが、そんなこと今のユティアにはどうでも良いことだ。


 "協力"を快く受け入れてくれた2人の話は、よく聴いてあげたいのだが、今は先を急ぐ必要がある。

 足を止めて悠長に話すという行為を、ユティアは許すことが出来ない。


「ごめんなさい。今はゆっくりしている時間が無いんです。先を急いでいるので。もし気になるのなら、私の後をついて来て下さい。先を急ぎながらなら、話せることも有るかも知れません」


「なるほどな。確かに最初から急いでいるみたいだしな。構わねえぜ? どうせ俺達も上を目指してるんだ。悪いが、一緒に行かせてもらうとするぜ?」


 シエラに視線を向けながら話すレイグ。

 その視線を受けて、シエラは頷いていた。

 2人の総意だと、ユティアへ意思表示しているのだろう。


「分かりました。それじゃ、先を急ぎます。……あと、1つ言っておきますが」


 そこで言葉を区切るユティア。


 レイグとシエラの2人は、次にどんな言葉が発せられのか、自然と意識を向けてしまう。


 そして、


「私は止まりませんので。ついて来れなければ置いて行きますよ?」


「――ッ! ハッ!」

「うふっ。面白いわね」


 ~


(あり得ねぇだろ!? どうして差が縮まるどころか、広がってんだよ!?)


 終始余裕の表情を崩さなかったレイグが、遂に焦りを浮かべていた。


 自分たちの前方を駆けるユティアは、46階層という決して低いとは言えない階層の魔物や魔獣を、一閃しつつ進んでいる。

 だと言うのに、その速度は落ちるどころか増している。


 いったいどういうことなのか。と、理解出来ないでいた。

 "適能"だからと言って、こんなことが起こり得る物なのか。と。


『ついて来れなければ置いて行きます』


 ユティアの言葉が、脳内で再生される。


 アレは、何の冗談でも無かった。

 まさか、本当に現実の物になるとは思っていなかった。それが今、実際に起ころうとしていた。


「ちっくしょうがぁぁあ! シエラ! ちゃんとついてこいよ!」

「ッ! もう! 分かってるっ……てば!」


 それでも、2人は何とかユティアの速度に付いていく。

 この2人も充分に"普通"ではない冒険者なのだが、ユティアと比べられると、"普通"に見えてしまう。


 そんな2人が後ろで必死に追ってくる中で、ユティアは、


(ロワ君、大丈夫かな。絶対……"賢者"を連れて行くからね!)


 ロワのことしか考えていない。


 しかし、そのおかげで、ユティアはこれ程までの常軌を逸した速度で階層を進めることが出来ている。


 50階層(スカイアベル)には、もう間もなく到着するだろう。

最近、本文よりサブタイトルを考えるのに時間を使ってしまいます。

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