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自然的階層(ユグドアベル)01

 

 巨塔(アベル)第20階層の大広間を見回して、改めて思う。


 ……本当にこの巨塔はどんな構造になっているのか、まるで見当がつかない。

 20階層のこの大広間は、1階層の大広間同様に広大だ。当然50階層の大広間とて同様に広大だ。


 不思議に思うのが、この20階層と、50階層の大広間に大穴(アベルのへそ)が存在しないことだ。

 大広間以外の階層には、必ずどこかに大穴が存在する。そしてその大穴は1階層の大広間まで突き抜けている。

 それは、俺が107階層の大穴に落ちて、1階層まで真っ逆さまに落下したことから、間違いないことだ。


 上を見上げてみる。

 すると、途方もない程に遠く高い場所に、僅かに見える光源がある。

 "最上層の光"と言われている光源だが、この光源は1階層の大広間からも確かに見えるのだ。

 何故なのか? 不明だ。

 50階層にも大広間があるのだから、この光源が20階層から見えるのはおかしい。勿論1階層からも、同様の理由で見えないはずなのだが、"最上層の光"はどの大広間からも見る事ができる。


 この理由も、巨塔の最上層まで至った時には、分かるかも知れない。


 そんな事を考えると、少しでも早く巨塔を上がりたい衝動に駆られるが、グッと堪える。


「ロワ君! 私達も早く街へ行こうよ!」


 大広間の中央付近で立ち止まっていた俺に、ユティがそう急かしてくる。


 ユティにとっては、初めての1階層(アベルヘイム)以外の街だ。

 シズネとオトネがそうだったように、楽しみで仕方がない様子だった。

 ユティが俺の腕を引っ張っている。


 ユティに連れられるようにして、俺達は大広間から外へ出た。


 ~


「すごーい!」


 大広間から外へ出るなり、街の景色を見たユティが感動した声を出していた。


 巨塔第20階層の街、"自然街(ユグドアベル)"だ。


 広大な大地から逞しく生えた樹木や、透き通るような運河があちこちに流れている。

 美しく、逞しい自然に囲まれた街だ。

 1階層程に巨大な街ではないが、あちこちに見られる巨木のおかげで立体的に栄え、巨塔1の迫力を持つ街に発展した。


 緑溢れる街並みを見ると、不思議と清涼感に包まれる。

 冒険者達が最も愛する街であり、"上層組"もよく訪れる。


 俺もこの街のことは大好きだったが、上層組となってからは50階層(スカイアベル)を拠点に巨塔攻略に明け暮れていたため、訪れるのは凄く久しぶりな気分だ。


 少し街を見て回りたいとは思うが、まずは宿の確保をすべきだろう。


 今度は逆に、俺がユティの腕を引っ張る形で歩き出した。

 ユティが、どこか知らない方向へ勝手に歩き出してしまいそうな気がしたからだ。

 20階層の街は、かなり複雑な構造になっている。立ち並ぶ巨木を利用する形で発展した街なだけに、一度はぐれてしまえば面倒なことになりかねないのだ。



今回は少し短くなりました。申し訳ないです。



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