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少女に明日はない⑦


それから私は、園芸部に足を運んだ。


部に入る訳ではないが、なんとなく先輩のやっていることを見てみたくなった



園芸部は男子は先輩を含めて2人と女性メインの部活だった。

そこまで身体つきがいい訳でもない先輩でも肉体労働のお願いは多いようで


部活の間はほとんど周りに部員の女子が付き添っていた




「……」



なんだか面白くなかった


ミステリアスではあるものの、可愛らしい先輩の姿はそこにはなかった

後輩に頼られて、女の子に頼られて

ただただ眩しい人間がそこで汗を流していた



時折見せる笑顔が近くの女子に向けられていることも面白くなかった




「こんにちは。」



「あれ?郡山さん


こんにちは。」



何日か経ったある日私は先輩に声をかけた



気のせいか私が話しかける先輩はこれまでの先輩と違い

どこかミステリアスな人に見えた


いや、そう思ってるだけかもしれない




「何してるんですか?」



「先輩は肥料の準備してくれてるんですよ。ね?日向先輩?」


そばの女子部員が会話に割って入ってきた





あーー


私は思わず苦笑いを浮かべた




私はこの子の顔を知っている


尤もこの子自体を知っている訳ではないが、

『この顔』については知っている




『牽制』だ



この子が私のことを知っているかは分からないけれど

本能的に自分に仇なす存在だと判断したのであろうか



敵意を隠しきれないその眼で私を見る姿を

私は知っている




つい最近までお山の大将だったことでこの眼を忘れていた。




「あはは…そうなんですね。


お邪魔してすみませんでしたー」



バツの悪い笑顔を浮かべて私はその場を後にした。



「郡山さん」



背後で先輩の呼ぶ声がした


少し高揚した気持ちと少し刺さる胸の痛みと

溢れるばかりの気まずさのせいか


私の返事は少し遅れた



「…はい」




先輩は笑顔で手を振った


「またね」



私は恥ずかしくなってその場を足早に去った

先輩の言葉に返事をすることもなく




「うわ!ごめん前見てなかった!」

一心不乱にその場を離れたせいで誰かとぶつかった



「ご、ごめんなさい。私も前見てなくて…」


言葉が続かなかった

何故だか私の顔を涙が伝った




「えー!!ど、どうしたのそんなに痛かった? ご、ごめんて郡山さん!」



大慌てでぶつかった小島くんが平謝りをしてきた


それからしばらく私の涙は止まらなかった

彼の狼狽は私の涙が止まるまで続いていた








「…落ち着いた?」



「うん。ごめんなさい本当に」


小島くんは缶のジュースを私に差し出した。

あぁ…この人がみんなに人気なのが少し分かる気がする


突然の状況ではあったにも関わらず

何も言わずにそばで待っていてくれた

きっとこういう優しさが皆を惹きつけるのだろう



私の邪な考えと違った真っ直ぐな人だ。




「良くない話?」


小島くんは缶コーヒーを開けながら一言尋ねた



「え?な、なにが?」

彼が何を言いたいかまるで分からなかった



悪戯な笑顔を私に向ける彼は

時々芯を食わない言葉を投げてくる



「それ」

彼は自分の目を指差した



「…あっ」

私が泣いた理由のことだと気づくのに少々時間を要した。



「……違うよ。多分…」


私はそう呟いてジュースを一口


「…ってこれ、振るゼリーじゃない!!」

傾けた缶からは液体が何も出てこなかった



笑い転げる小島くん

真面目な顔で聞いてきたのが嘘のように無邪気な笑顔だ


「もーー!」

そう言いながら私も自然と笑顔が溢れていた







「小島くんはさ。誰か好きな子はいる?」


飲めない缶を手で弄りながら私は問いかけた



「……え?それって告白?」


「ふふっ。違うよ」


「なーーんだ。残念」



彼と話しているとペースを彼に持っていかれてしまう。

正直これまで彼のことが苦手な方だったが

今日に関してはありがたいとすら思えた



「いないよ」


そして、突然真剣な雰囲気になる彼はまるで二重人格かのように思える。




「何?郡山さんはいるの?好きな人」


何も答えない私に彼が追撃してきた




「…分かんない」


嘘ではないと思う

嘘ではないと思うけど

本当のことを言っていない気がした



「そっか…」


彼はまた一口コーヒーを飲んだ。


「うん」



夕焼け空が暗闇に移ろう瀬戸際の空がとても綺麗に私達の時間を包んだ



「郡山さんはさ」


彼は立ち上がった


「人を好きになるってなんだと思う?」




…哲学的な話をしているのかな


真面目な雰囲気と周りの空気からふざけているようには見えないけど

この質問の意図がわからない。



「…それが分からないからこうなってるのかもしれないね。」



素直な気持ちを吐き出した



「それもそっか」

彼は何か納得いったような顔をしている



「え、なんだったの今の質問?」


彼はまた無邪気な笑顔で答えた


「なんとなく気になっただけ!」



掴みどころのない人だ彼は

落ち着くとやはり彼のことは苦手かもしれない




私も立ち上がった。


「ごめんね。帰ろっか」



「郡山さん」


奇遇にも呼び止められた声が先輩のそれと重なった



「これからゆっくり探してこっか。


お互いに。 ね?」



腹の中を見透かされているような

何も考えていないような

どちらもあり得そうな人間に思えるほどに


彼と言う人間が見えなかった



「そうだね。」


私も同じような笑顔で返した




今日の帰り道も私の足は少しだけ軽かったような気がする


少しだけ。



今日久しぶりにアニメの『盾の勇者の成り上がり』を見てました。

2期が延期になったの残念。。。


その中で、第一王女のマインという主人公を徹底的に貶める悪役の女性がいるのですが

25話見終わってもやっぱりムカつくなぁっていう印象で


で、ふと思ったのですが、

ここまでムカつけるってことはそれだけ主人公の感情になれてるってことなのかな。と

徹底して悪役だからこそ、マインが何かすると

「まーーたあいつはー!!」とのめり込めるのかな。と


少女漫画で、男の子のかっこいい言動に心動くそれが同じ感覚な気もしますが

昨今、悪役もいい感じにいい奴、もしくはかっこよく見えるシーンとかで良く見えたりするのが多いですが

ここまで嫌な奴に徹してるのも珍しいなと。



例えば実写で舞台やらドラマになった時

キャストになる人はコメントで

「原作からこのキャラが好きで。決まった時本当に嬉しかったです。」とか言うのかな?と




たまに見るキャストのコメントは9割こういう内容なだけに、そう言わざるを得ない社会なのかな?と



変な空想を並べていました。




取り留めのない話でした笑


それではまた。

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