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翠晃冠は向日葵になれない②



「ユウキ。お前どうやって郡山さんと仲良くなったんだよ。」


ハルキストが教室の前で私に問い詰めてきた



「ど、どーしたんだよハルキスト藪から棒に」

そういう私の顔は少しにやけていた。



このハルキストとの感じが随分久しぶりに思えた。

現に20数年ぶりなのだから久しいのには違いないが、これまで経験した20数年とは違う感動が私を巡っていた。




「いや、郡山さんがお前のこと…」


ハルキストは何か言いたげな表情のまま、掴んだ私の襟首を離さないでいる。



「あ、相トくんおはよー。」


彼の背後から陽気な声で挨拶をする少女がいた。


「あ、郡山さんおはよう。」

私は自然と返事をする








嘘だろ?あいつが…

いや、てかあいつ誰だよ

小島じゃなくてあいつがそうなのか?

いいなぁ畜生なんなんだよあいつ




有象無象な級友がこそこそと噂話

…いや、陰口を叩いている





基本的に影に潜むタイプの人間が

突然目立つと冷やかされるものだろう



というか、私も以前まではそちら側だったのだ

嫌というほど痛感する。









その日の放課後


体育館裏で私を待つ少女の姿があった。


彼女は優しく微笑みかけてきた。





私は自分の心を静めんとし

己の使命を今一度胸に刻む。




「待ってたよユウキくん。」


吉崎翠は、いつだったかの大人しい風貌で私を迎えた。




「つい昨日一昨日のことなのに、なんか久しぶりに思えるよ。」


私の頭には柵に足をかけた彼女の姿が蘇る

悲しい表情をした彼女の顔が

歳を若くして今目の前にあると思うと

胸が苦しくてたまらない。





「げ、元気してた?」


私の精一杯だった。

彼女を前にして言葉は全て何処かに行ってしまい

ようやく掴んだ言葉は他人行儀な挨拶であった。




「元気だよ。」


彼女があまりにも何もなかったかのように接するので彼女もまたあちら側の住人になってしまったのではないかと心配になるほどであった。




「怒ってる?」



怒ってると言わせない雰囲気を身に纏い

彼女は上目遣いで見上げてきた。


全くもって女性というのはずるい生き物だ。




「これからは、よろしくね。」




私は彼女に誓った約束を果たすべく今日この場所に赴いた。


彼女の約束には彼女の悲痛な叫びと彼女の切な願いが入り混じっていることを私は知っていた。



私が想いを寄せた女性の渾身の頼みである

断れるわけがなかろう。






「よろしく。




吉崎さん。」





私達は再びよく知らない級友として

忘れられない夏に向かって歩き出した。


良き理解者として

良き共犯者として

良き従者として




私は彼女の伸ばした手を

強く握り返した。

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