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無機質な部屋で少年は何を思う①


夕焼け色の空は夏の終わりを感じさせる哀愁を漂わせて

どことなく涼しい秋の風を運んできた。



窓を開けて夕涼みをする私の頬をその風が撫でる。





無であった。



驚くまでに私の心は無であった。




親友の死とこの世界の理

そして己の身に起きた事件




それら全てを理解する頭はもう無かった






疲れた。

私の人生の終わりは私の死とともにあった。


だから私から見ればこの世界は私に強いた人生やり直しのように見えた。




今思えば私の人生が仮に充実しようとも

私に訪れる死に変わりはないのだ。




よもや、私の人生がどう彩られようとも

そこに意味なんてものは無いのだ。


ただ時が流れて、死が訪れる。




それだけを思えば、皆と変わらないではないか。



やり直すことさえなければ何も。






吉崎翠が帰ってから私は物思いにふけるようにこの場所に佇んでいた。



彼女もまた自分の辿り着いたゴールに絶望していたのかもしれない。


私にはそれを思いやる余力が無かった。





私は窓の下を眺めた。


今私のいる部屋は3階の角の病室で

下にはベンチのある広場があった。




何やら車椅子の男性と年の頃が同じくらいの女性が談笑しているようだった。





ふと、私と茜の姿を重ねてしまった。




私達はあんな風に楽しく話していたのだろうか。

茜はあの時どんな顔をしていたのだろうか…


茜はわざわざ夏休みに私の見舞いに来て


茜は誰よりも私を心配してくれて


茜は私にとって


茜は…






気のせいか二人の会話声が聞こえるような気がする。


会話に盛り上がっているのだろうか




「早く元気になりなさいよ。」



「分かってるって。こんなのすぐだよ!」








いいなぁ…







「きゃーーーーーーーー」





けたたましい悲鳴が響いた。


見ると先ほどまで談笑していた女性が悲鳴を上げている。




こちらを見ている。




あれ?






「ひ、人が落ちてきた!!!」






激しく打ちつけた身体は動くことはない。

内臓がひどく損傷したのか息も絶え絶えである。


私は霞む視界に抗うこともなく

そっと目を閉じた。



































ピピピピピピピピピピピピピピピピ




目を覚ました。


不思議な感覚だ

私は生きているのか。



どこまでも頑丈な身体だ。





ん?


体が痛くない。


それにこの天井


見覚えがない。





軽々と体を起こすことが出来た。



部屋を見渡してもやはり見覚えがない。




実家でも病院でもないこの部屋はどこだ。





ベッドを出てリビングに向かうと、テーブルの上に一枚の写真が置いてあるのが見えた。




「これは……」




その写真は



私だった。


最も年の頃では30代から40代の私であった。





「え?」


奥の部屋から目を丸くした吉崎翠が現れた。




「え?」



壊れたラジカセのように同じことを口にした彼女を見て私はここについて理解した。





「え?」




彼女やハルキストたちが過ごす、過ごした家に私もお呼ばれしてしまったのだ。



図らずとも


図らずとも

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