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少女はただ青い青い空を仰いだ⑥



「それからはあなたの人生を全て見てきたの…


今日に至るまで、全て。ね」



吉崎翠は悲しげな笑みを浮かべて私に全てを話した。






「にしてもあれはないわよ!

あなた、クラスでも冴えない人間なのにチャラっチャラしちゃってー。


あの時は笑いを堪えるので必死だったわー。」





人の黒歴史を知られている人間というのは非常に不都合な存在である。


時に人間は過ちを犯す生き物であって

過ちを犯さない人間など1人とていない

つまり私の行動は長い人生における

思春期のようなものであってつまり…





「や、やめてください…」




恥ずかしさで顔から火が出るところだった。






彼女の機転によってこの場は少し和んだが

彼女の話は一時の笑いでごまかせるほど軽い話ではなかった。




彼女もきっと一人で辛かったのだろう。

私の繰り返し全てを見てきたということは200年近くの記憶を私同様に保持した上で同じような時間を過ごしてきたのだから





「……ん?ちょっと待った」


私の中に一つの疑問が芽生えた。



「確かハルキストは、僕と関わるよう言ったんだよね?

知る限りでは今回の周回の中で初めて君と関わったはずなのだけれど。」




彼女は酷く驚いた顔をしていた。


そして何かを悟ったように優しい笑顔を私に向けた。



「そっかそっか……なるほどね。」



「な、なに?」




彼女には全てが分かったようだが私にはさっぱりである。




「まだ確証はないんだけど、とりあえず分かったのは2つ。」


彼女は私に向けて二本指を立てた。



「一つは、あなたも周回毎に記憶を一部失っていること。」


立てた指を一本下ろしながら彼女は話す。



「あなたは身に覚えがないかもしれないけど、私はあなたで言う2周目にあなたと友達だったのよ?


それもかなり親密な。 ね。」




いや、そんなはずは…

彼女の存在は記憶にはあったが彼女とは同じく路肩の石のような立ち位置から相容れない存在だったはず…

過去の私もそう見ていたはずだ。なのに…




「記憶がリセットされた人間には、その間の記憶が綺麗に縫合されてるの。



だからあなたの記憶に私はいないのかもしれない。

記憶がなければ、いないと思うのが当然だものね。」




どう言うことだ…

何故私の記憶まで改竄されているのだろうか



「一体なにがどうなってるんだ…

整理がつかない」




彼女は悲しい目をして私を見た。

きっと彼女はこれまでに何度も自分を忘れる人と過ごしていたのだろう


そして記憶を継承する私と言う人間に会えて

報われたと思っただろうに。



奇しくもその彼女の記憶だけを持たない人間と出会うとは皮肉なものだ…




「本当はあなたと仲が良くする上で、彼と仲良くしたいからあなたの恋を応援していたんだけれどね。」





そうか


自分を知らない最愛の男を口説くために私に近づいたと言うことか…


まぁそれも仕方のないことだ。




「そして最後の一つ。


これは正直酷く報われないことだけど…さ」



彼女の目に光は無かった。





「彼も言ってた。あなたと関わることで環境が変わったって。


だから勝手にあなたが、この世界のキーマンなんだと思ってた。



あなたの為の世界なんだと」






彼女は哀れむような目で私を見た。




「あなたの記憶がいじられていること


私より前にあなたがいなかったことを総合して考えると、解は一つ。」









「あなたもただの1プレーヤーってこと。




私と同じこの不可思議な世界を彷徨う亡者なのかしらね。」







二本の指を曲げ切った彼女の腕はだらしなく垂れ下がった。



そして、私達は




黙って窓の外の景色を眺めるより他なかった


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