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少女はただ青い青い空を仰いだ④




「君に伝えなければいけない話がある。」



彼の接頭語は、結婚した夫婦にしては酷く他人行儀な切り口で話し出された。




「僕は…この時代の人間ではないんだ。」




彼の口からは想像もしていない一言が発せられた。




「えっ…ど、どういうこと?」



たじろぐ私を前に彼は続けた。



「君は自分がこの世界に来た時のことを覚えているかい?」


「君は、この世界に来る前にこの男と出会ってたんじゃないかな?」



そう言うと彼は一枚の写真を取り出した。



そこに写っていた人物は



「あ、相トさん?」




入院中の相ト悟の写真であった。



「そう。僕は彼をユウキと呼んでいるが、相ト悟で間違いはないよ。」




彼は淡々と話を続けた




「信じられないかもしれないけど、僕も君と同じようにある日突然この時代にやってきたんだ。」




私には現状が全く理解できてなかった。


「彼は齢40のある日にガンで亡くなった。

元の世界の僕は彼の主治医だったんだ。」




彼は24年間閉ざしてきた真実の扉をそっと開けた。




「彼が息を引き取った直後にこの世界にやってきた。」




「この時代の僕は白血病患者だった。」




あまりに淡々と話すせいで事の重さをうまく認識できなかった。




「突然知りもしない場所、時代に来たのに

それがまさかの白血病患者とは。



正直、はい。そうですかと納得できるはずもなかったんだ。」



「そんな時に、1人の女性と出会ったんだ。


そしてかつての僕のように親身になって話を聞いてくれ、側にいてくれた人だった。」




「そこから奇跡的に私は快復し、40歳まで生きる事ができたんだ。


そして40歳のある日。

彼女は真実を語ってくれた。


そして、今から僕が話す話もその時に彼女に話されたことと大きな差はないんだ」




息をつくことも忘れ、私は彼の話から目が離せなかった。



「彼女もまた別の時代からこの時代に飛ばされてきた人間だったのだと。


そして、次の転生者が現れると同時にこの世界の住人と化すこと。」




彼の話は荒唐無稽であったが、

仮にも同じ経験をしている私には重く刺さった。




「そして、僕が40歳を迎えたある日


また僕は高校生の姿で、この部屋で目を覚ました。」




彼はそっと立ち上がりコーヒーを用意してくれた。



私は彼が歩いた後も彼のいた位置を

その一点を見つめていた。




「もしかしたら気づいているかもしれないんだけど」


コーヒーを私の前に置きながら彼は話を続けた。




「明日がその日なんだ。

高校生に戻されるその日」



彼はコーヒーをかき混ぜながら呟いた。




私の目からは涙が溢れていた。




私は次に彼が何を言いたいのか分かってしまった。









つまり、私達の結婚生活は


今日が最後であるということだった。

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