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少女はただ青い青い空を仰いだ③


私が落ち着く頃にはすっかり日が暮れていた



彼は結局最後まで私の側にいてくれたのだった






「吉崎さん…だよね?俺、同じクラスの小島だけど、分かる?」


彼は優しく私に語りかけてきた。



正直なことを言うと私は何も分かっていなかった。ただ今この場において彼に見放されることを何よりも恐れた私は咄嗟に大きく頷いた。




「もしかして、何か困ってるの?」




彼が天使に見えた。

まるで救いの手を差し伸べられたが如く私は今の現状を洗いざらい話した。



私が吉崎翠であること

私はこの場所この時代でないところにいたこと

私は本当は28歳であること

私はこれから帰る場所も何をすればいいかも分からないこと




彼はただまんじりともせず私の話を聞いていた。

彼は悲しくも優しい目で私を見つめ



「それならうちにおいで。」


そう告げて立ち上がった。





外で待たせていた友人に別れを告げ、私の元に戻ってきた。

そのまま彼に手を引かれて彼の自宅まで連れてこられた。




彼は高校生にしては珍しくアパートに一人暮らしをしており、2DKの部屋の一室を与えてくれた。




「あ、あの…」


「ん?」



彼は相変わらず優しい目で私を見る。



「どうして…どうして私を助けてくれるの?」


20代後半にもなると人の善意を真っ直ぐに受け止められず下心を意識して暮らす日々が続いていたこともあり、今回のことに動揺を隠せなかった。



「なんでって…」


彼は笑いながら語りかけてきた。



「困ってる人を助けるのは理由がなきゃだめかな?」





彼が神に見えた。


その一言がとても神々しく、まるで信じるものが皆救われる神の御加護を受けたような

そんな気持ちになった。






それから私と彼の同居生活が始まった。




私として見れば、恋した相手との同居生活で幸せを感じ、この境遇への絶望を忘れられる程に私は満たされる日々を過ごしていた。







その後私たちは高校卒業と共に交際が始まった。





社会人になって私たちは結婚、子供にも恵まれた。





30を過ぎる頃には元の生活の記憶もおぼろになるほどに素敵な日々を過ごしていた。




そして




私たちが40歳を迎える年の元日




彼は大事な話があると言い、子供を彼の実家に預けて2人だけの時間が生まれた。







そして、彼の口から真実が語られた。


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