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螺旋の運命を辿るあなたは②



目を覚ますとまたしても見慣れた天井が目に入った


無数の黒い点

端に見える緑色のカーテン



どうやら個室ではないようだ。




「え…あれ」


身体には何本ものチューブが繋がれていた。



「さ、悟‼︎」


母さんの声だった

母さんは泣きながら病室を飛び出して行った。




しばらくして医者と共に帰ってきた



「相トさん私の言葉が分かりますか?」



「あ、はい。」


言葉を発したつもりだったが声として出てきてはいなかった




「お母さん…意識を取り戻されたようです」



え、あれ?

もしかしてまた時間が戻ったのか



身体はろくに動かないので目だけで周りを見渡す



茜…はいない。


また時間軸が変わったのか




「一旦落ち着いてからまたお話を伺いにきます」

先生はそういうと部屋を後にした。


部屋から出る時、部屋の外に二人組のスーツを着た男性が立っているのが見えた。




しばらく母親が泣いている姿をただ見つめることしかできなかった。


2.3日すると声も出せるようになり

少しばかり身体が動くようになった




一通り医者から検診を受けた後、数日前に部屋の外に立っていた二人組の男が入れ替わりで部屋に入ってきた




「相ト悟さん。」


言葉にできない不穏な空気が私の病室を取り巻いた。



「は、はい。」


恐る恐る言葉を返す



「まずはお身体が無事で何よりです。」

礼儀正しく回復を祝っていただけた。




「早速本題に入って恐縮ですが」


そう言うと片方の男が背広から一枚の写真を出してきた



「あなたはこの女性に覚えがありますか?」



そこには制服姿の葵が写っていた


「え、えぇ友人の彼女です。多分」


これがどの時間軸なのか分からず曖昧な返事をしてしまった。




「実は先日、こちらの郡山葵さんが警察署に自首してきまして、事実確認で伺わせていただきました。」



私は言葉を失った



そして違和感の正体が全て繋がった



この場に茜がいない点

病室が個室でなくなっている点

母親がここまで傷ついている点

身体が思った以上に動かない点



全てある一点の解に結びついていた。




「あなたはこの女性に突き落とされたのですが、記憶にありますでしょうか」




あの日から時間は戻っていなかった


私は奇跡的に一命を取り留めていたのだ




そして、葵が自首をした。


間違いないやはりあの時私を突き落としたのは彼女だったのか




現実を受け入れた上で怒涛の勢いで喪失感が押し寄せた。



私はこれで大事な知人を3人全て失ったのだ

どんな気持ちで彼女は私の背中を押したのか


今はもう知る術もない。



「いや、気のせいじゃないですか?

友人の死を受け入れられず私が身を投げたんですよ。」



葵を許すためでは無かった。

むしろこうすることで自分の罪を精算できると思ったのだ



警官2人は顔を見合わせた。

まさか被害者が加害者を庇うとは思っていなかったのだろう




しばらく話し合った後に警官は部屋を後にした







私は1人残された部屋で窓の外を覗いた





元の個室と違い今の病室から覗く景色は

空が青く見えることはなかった。

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