向日葵の咲き乱れる夏に②
「ごめんなさい。あなたのことそういう風に見れなくて・・・
友達として・・・って言うのじゃダメかな?」
そう言う彼女の目は潤んでいた。
こんなの言うことを聞くに他ならないのは一目瞭然だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え、あ。あぁ・・・そっかそう言うことなら友達として、よ、よろしく。」
身に覚えのあった光景だった。容姿は違えどセリフは同じものをぶつけられた私は
結局、当時と遜色ない回答をしてしまった。
あぁ・・・またフられるのか。
「うん。 これからもよろしくね。 ユウキくん!」
屈託のない笑顔を向けられた私は、苦笑いを返すに他ならなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いかん。 嫌なことを思い出した。
なんだって人間ってのは細かいことは覚えていないのに、きっかけを与えられると鮮明に思い出すのだろう。
不思議なもので、実質100年分の人生を過ごして感情に鈍くなっていたはずの私も
こう言うイベントに関しては何度となく心が揺さぶられる。
かく言う告白して沈んだ彼も、揺さぶりはおろか深い傷を負ったに違いない。
そう、恐らく彼も以前の私も 彼女の完璧なまでの「人気者」たる努力の屍と化したのである。
「それじゃ、私行くね。」
そう言うと彼女は私の方に歩いてきた。
思わず私は影に身を潜めた。
反射とは怖いもので、覚えていたはずの展開にも同様を隠せなかった。
そしてこの後の流れは覚えている。
私の前で存在に気づき、こちらに向かって微笑みかける。 そして
「あれ、同じクラスの相トくん・・・だよね?」
ほら来た。
これだよこの展開だよ。
彼女は何回人生を歩もうとも、私のような日陰の存在でも名前を覚えている人間なのだ。
そして2周目の私も、この時点で恋に落ちていたのだろう。
「ああ。 郡山さんだよね。 変な現場を覗いちゃってごめんね。
悪気はないよ。ただ、人気者ってのも大変だよな・・・」
自然と口が進んだ。
何故だろう。悪意に満ちているが、ここまでスラスラ喋れるのは気持ちがいい。
私が己の成長に自己陶酔していた頃
彼女は、やはり空虚な目で 私のいる方角を眼下に捉えていたのだった。