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螺旋の運命を辿るあなたは①



8月も終わったというのに蝉時雨はけたたましく

この炎天下に鳴り響いていた。


外の照りつける日差しと対照的に病院内はエアコンが効いてしっかりと冷やされていた。



外の世界との隔絶を感じるほどまでに現代の文明は優れていた。




故人 小島春樹のお通夜は昨晩

恙無く執り行われた。

8月最終日の夜のことだった


あまりにも事が急に過ぎ去って行った。

悲しむ間もなく親族はお通夜、葬式を手配しなければならない。

病院もご遺体を預かるのは2日程度



まさに息もつく暇もないままに行動を迫られるのだ。



私の時は、どうだったのだろうか。


父親はすでに他界しており、母親が式の手配をしてくれたのだろうか。

孫の顔を見せられていないし、息子の葬式を手配させてしまった。


とんだ親不孝ものだったと感じる。



通夜の席に葵は現れなかった


恐らく今日の告別式には現れるのだろう




余談だが春樹は自分の身に何かあったときのために臓器提供にサインをしていたらしい


ただ今回の事件は身体への損傷が大きく、提供に値する臓器はほとんど残っていなかったようだ。




そんなことは正直どうでもよかった。

春樹が死を選んだことが問題だった。


彼の最後の手紙にもあったが

相当悔いていたのが窺える。



何より彼の心の拠り所の彼女が、

実は友人の想い人だった事実

そして、それを機に私との関係が変化してしまった現実


そして




記憶の混濁による不安定感




全てが奇跡的に噛み合ってしまい

彼をその道に誘った。




「私のせいだ」


火を見るより明らかなこの事象は私を酷く追い込んだ。

何より今の私の心の拠り所である二人を同時に失ったのだ。


もう私の現実に光はない。

どんな顔で葵に告別式で会えばいいのか。



もしかすると、彼女も自分を責めているのではないか。




もう考えだすと止まらなくなった。


「相トさん。」

看護師に呼ばれリハビリを受けに行くも

これになんの意味があるのかわからない



今自分が生を受けている意味がわからない。




「もう疲れた」


今まで何度も何度も人生を過ごしてきた私の口から遂に諦めの一言が飛び出した。



今死を選んだらどうなるのだろう。

今人生を終わらせたら元の40で亡くなる現代に戻るのだろうか

いや、もはや現代とは何なのだろう

私は何のために人生を繰り返しているのか





気がつくと私の足は屋上に向かっていた


春樹はこんな思い出ここから飛び降りたのだろうか。

私まで飛び降りたら曰くつきの病院になってしまうのだろうか。




「ま、死人に口無しだな。」


そっと屋上のフェンスに手をかけた。





そこから私の手は動かなかった。

いや、身体も動かなかったというべきか





「……」


私の目から涙が零れ落ちた



フェンスに手をかけ真っ先に思ったのは


『死にたくない』



ここまできて自分が生に執着していることに気付かされた。




ここまで業を重ねた私は

最後まで生を求めたのだった。






「ユウキくん」



私のすぐ後ろで声が聞こえた気がした。



次の瞬間






私の身体はフェンスを乗り越えていた。





「あ…」


かつての武将達は死の前に辞世の句を読んだという



私の辞世の句は感嘆詞一つであった。




最後に私の視界に映ったのは



悲しい顔をして両腕を伸ばす

郡山葵の姿だった。

頑張って23時投稿を定期的に出来たらと思います。



ちょっとランナーズハイの如く2章を駆け抜けたので文章もふわふわしてきてる気がする




シリアスな文章がなかなか難しいですね。

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