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止まらない止まらない止まらない⑧


私の望んだ生活はこれなのか。


私が何度も何度もやり直してまで手に入れたかった青春はこれなのか。



これがハルキストを踏み台にしてまで手に入れた幸せなのか。




もう分からない。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おはよう。」


今日もまた有馬茜は私の病室に顔を出しに来た。

そういえば、そろそろ夏休みも終わりか…



「おはよう。茜」



彼女が出来た余裕なのか

私の口からかつて想像もしたことがないほどにすらすらと言葉が出てくる。



「お、おはよう。なんか悟が彼氏ってのは違和感凄いけど、そんな感じの悟はもっと違和感があるな…」


照れながら言う茜はとても可愛かった。



確かに茜の言う通り、私の言動は少し今までと違っている。



もっと彼女が出来た翌日は、初々しく互いに照れたりするものなのだと思っていた。


それに

「お、おおお、お、おはよう。有馬さん‼︎」


みたいな感じがこれまでの私だったろう。




嫌に落ち着いている。

なんだこの感覚は


いや、そもそもこの違和感を自分で客観的に考察しているこの状況そのものがおかしい。





「今日はちょっとデートしようよ。」


茜はそう言うと松葉杖を持ってきた。

尤も今の私には松葉杖が無くてもある程度歩けるほどには体力は回復していたのだが

彼女の厚意にあやかって、今日は松葉杖を使うとしよう。





夏の終わりが近いにも関わらずまだ、残暑厳し日差しの中私たちは庭に出た。



久しく外の空気は吸っていなかったので新鮮な気持ちだ。


昨日から、少しハルキストの部屋に行くのが憚られていたのでデートはいい口実だった。





「あ、ユウキくんおはよう。」


正門から入ってくる葵に出会すまでは。





「あ、どうもおはようございます。」


「なにー?彼女とお散歩??見せつけてくれるねぇ」


葵は私を茶化すように笑った。

私はというと、うまく笑えず変な表情で笑い声だけ出していた。



「改めまして。有馬茜って言います。」

横から茜が割って入ってきた。



「はじめまして。郡山葵と言います。」



……


私は顔を背けてしまった。



「あ、葵さんよろしくお願いしますね。」


茜は至って普通に振る舞っていた。



「ちなみに」


「うちの悟とは以前どこかでお会いしてましたか?」


…‼︎



な、何を言い出すんだ。

そんなこと聞いてどうしようというのだ彼女は



「ん?悟さん? 弟さんですか?」


葵はキョトンとした表情だ。


「あ、えっとー悟ってのは…」

そう言うと茜は私の襟首を掴み引き寄せ


「こいつのことです。相ト悟」

意せずして再び葵と面を合わせることになってしまった。



彼女は目を丸くした

「あ、え。いやだごめんなさい。

私てっきりユウキさんって名前なのかと…


あいつ、あだ名しか教えなかったから…」





「あはは…ですよね。」

私は安堵と落胆の気持ちから軽くその場を流した。



「小島くんとはいつからの付き合いなんですか?」

茜は質問の手を止めない。


「え!?いつからってそれは…」


「茜、その辺にしとこう。困ってるだろ」

私は偉そうにも二人の会話に割って入った。


茜は私と一切目を合わせず続けた。




「高校に入ってからなんですか?

それよりも前からなんですか?」


葵はたじろいでいる。

「え、えっと…」



「茜、もういいだろ‼︎」

私の声は茜の抑止力にはならない。



「もしかして幼馴染なんですか?」


「茜!!」


思わず声を荒げてしまった。




状況が読めず葵はあたふたしている。


「郡山さん引き留めてしまってごめんなさい。あいつんとこ行ってあげてください。」



「え、ええ。なんかごめんね?」


そういうと茜にも会釈をしてそそくさと院内に入っていった。




茜は相変わらずこちらを向かない。


私もバツが悪く茜の方を向けないでいた。




「ねぇ」


茜が姿勢を変えず話しかけてくる。


「やっぱあの子があんたが言ってた『あおい』ちゃんなんでしょ」




いつかはその話に触れる日が来るとは思っていたが、いざ来ると困ったものである。





なんと説明すれば良いのだろうか。


私と葵と茜の関係について

一体どう説明すれば良いのだろうか。




「ねぇ」


またしても茜は口を開いた。


「本当は私のことなんて何とも思ってないんでしょ?」



そんなことない。好きだ。



その言葉が出れば何事もなくまた茜と笑い合えるのだろうか。


ただどうしても私の口からは茜の発言を否定する言葉は出てこない。




「…わかった。」


茜は腕で顔を拭い


「私、帰るね。」



そのまま病院を出て行った。






追いかけるべきなのだろうか


追いかけたとしてどんな言葉をかければいい?

抱きしめるべきなのだろうか

如何せん私にはそれらの正解に対する知識を持ち合わせていない。



私は自室に戻ることにした。




「あれ?ユウキくん。」


再び葵と出会った。


もう帰るのか?




「ハルキストのとこはもういいの?」


浮かない顔を悟られまいと笑顔を取り繕う。




「それがねぇ下であなた達とあった話をしてたら急に思い詰めた表情してねー」


「そしたら今日はもう帰れーって追い返されちゃったのよね。」



「そ、そっか。なんかあったのかな?」


「そんなことより、茜ちゃん帰っちゃったの??お友達になれたらと思ったのに。」




まったく。

相変わらずというかなんというか

時間軸は違えど郡山葵という人物は

変わらず私の知る彼女そのものだった。



私は思わず笑顔が溢れたのを悟られないように

「また次来たときに仲良くしてあげてください。」

紳士的に振る舞いその場を後にした。





部屋に戻ると、私のベッドの上に手紙が一通置いてあった。




『悟へ』




それは茜の残した手紙であった。

一応次回が、2章の最終話になります。


ちょっとシリアスになりますがお付き合いいただければと思います。



また書けるうちにガンガン書いているので、投稿頻度がぐちゃぐちゃですが


一旦この章が終わったら頻度をうまく調整します。




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