止まらない止まらない止まらない⑦
ドアの隙間からひょっこり出てきた顔に私は安堵した。
「あ、茜…」
「あ、いた。面会きてんぞ……っと、小島じゃん。」
ハルキストと茜が軽く会釈する。
「ん?ユウキと有馬って付き合ってんの?」
こういう質問を軽々しく出来るこいつの神経はここまでくると見習いたい。
『ば、誰がこいつと‼︎』
そんな罵声が飛んでくるものと思っていたが、茜からの反応がない。
かくいう私は何も言葉が出てこなかった。
「ん?まじなの??適当に言ったんだけど」
「…」
「…」
部屋の中を嫌な静寂が取り巻く。
「あ、いや…」
「そうだよ。」
茜の発言に一番驚かされたのは私だった。
茜は私を一瞥して、一呼吸おいて話し出した。
「私が絡まれてるとこ助けに来てくれてさ、そっから色々あって今に至るってわけ。
ね?悟」
優しい笑顔で私に微笑んだ彼女に対して、私は顔を逸らしてしまった。
「…ってそんなことはどうでもよくてさ、悟。面会きてんぞ。母ちゃんが」
私は我に帰った。
「あ、あぁ…戻らないと。」
ふらふらと茜の元に歩き出した。
「それじゃ、春樹、葵さん。
また。」
『また』会うことは出来ればないに越したことがないが、なけなしのプライドで最後に言い放ち私と茜は部屋を後にした。
「なぁ」
ドアを閉めてから茜は私を呼び止めた。
「…」
「私、相トの彼女ってことで良かったのか?」
彼女は賢い女の子だ。
あの一瞬で、私がたじろいでる様から
事実ではなく、適解を導き出したのだ。
あのように言えばそれ以上の詮索の余地はないし
何より彼女であること以外は嘘はついていない。
助け出したとは言ってないし、
それを機に今の関係性になっているのも事実だ。
あの沈黙の間にそれを叩き出した彼女は
とても賢い女の子だ。
「なぁ……もしかしてさっきの女が」
彼女はあまりに賢すぎた。
「茜」
私は彼女の言葉を遮り
「僕の彼女になってくれないか?」
強引で歪んだ愛情を彼女に告白した。
院内には看護師の声と誰かが走り回る足音以外何もなくなった。
「…うん」
茜は俯きながら小さく返事した。
こうして、私と茜の交際は始まりの鐘を鳴らし
私の人生における交際未経験の歴史に終止符が打たれた。
初めて恋人が出来た時の記憶は皆さんも鮮明に残っているのではないでしょうか
私は高校三年生の春に初めて彼女が出来ました。
(後書きがただの自分語りと化してきましたが)
完全に一目惚れでした。
関係を構築する前に告白をし、振られ
その後に関係を構築し交際に発展しました。
ダサ!!笑笑
今振り返ると非常に恥ずかしい愚行を繰り返していたなぁ笑
こないだFacebookでその彼女が共通の友人に取り上げられていました。
そっとアプリを落としました。
初恋は、美化したままにしとくべきだと私の第六感が告げたのかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
では。




