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止まらない止まらない止まらない⑤


「落ち着いたか?」



あれからどのくらい時がたっただろうか。


春樹は一言も話さずに、泣きじゃくる私を見守っていました。

私の涙の理由が分かってか分からずか

そんなことも判断できないくらいに泣きじゃくった私は、今になって状況の恥ずかしさを痛感した。



こんな若い子の前でいい大人が泣き喚いて、ましてや目下苦しい運命を背負っている人物の前で。


「あ、あぁ、ご、ごめんごめん。もう大丈夫!」


必死に取り繕う姿それも非常に情けないものだった。



「…ククク」


春樹の顔が緩んでいた



「はーっはっはっは!なんなんだよお前!」



先程までの静寂を切り裂く懐かしい春樹の、


いや、ハルキストの笑い声が病室の中で響いた。



「お前面白いな。相ト」

その言葉にはかつてのハルキストの面影が重なるようだった。





それからというもの

私達は多くを語り合った。

それは彼の病気についてでも

私の人生についてでもなく


この病院での生活や、これまでのこと

高校に入るまでの彼の人生など様々であった。



今思うと私は当時、現役高校生の時にすらここまで彼の歩んだ人生について聞いたことはなかった。


それは彼との交友が突然自然に

他の人間と差異なく彼の手によって始まったとこともあり、聞く考えに至らなかった。


尤も彼が日々とても幸せそうだったので、過去に目が向かなかったのかもしれない。





次の日も

また次の日も


リハビリを終えては私はハルキストの部屋に足が向かっていた。




「よ!ユウキ」


気がつけば彼はまた私をユウキと呼ぶようになっていた。



私は、解放感と友との交流による満足感から茜とのことを忘れ、ハルキストと過ごすようになった。



私はかつての仲以上にハルキストを慕っていた。

もしかすると、依存していたのかもしれない


ハルキストもハルキストで、数少ないこの境遇を理解しうる存在としてか、私を慕っているように思えた。




こんな日がずっと続けばいいのに。

彼の病気も進行せず

私も余計なことをして運命を触らず


こうして彼と馬鹿みたいに過ごせれば…




本末転倒な私の願いを神に祈るほか無かった。




そんなある日




「こんにちはー。」



私とハルキストのいる部屋に



郡山葵が訪ねてきた。

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