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止まらない止まらない止まらない③


相ト。


他人行儀この上ないこの単語一言で私は恐怖を覚えた。


彼、小島春樹には私との思い出がないのであろう。



冷静に考えればそうである。

入学してすぐに倒れてしまったのであれば

私たちが思い出を紡ぐ時間も当然ない訳だ。


私は何故そこに気づかなかったのだろう。

昨今の様々のせいでうまく頭が整理できていなかったのだろうか


嘆かわしい。


「珍しいな。お前が来るなんて」


春樹は続けて口を開いた。



「…って。よく見たらお前もお仲間かよ。」



嘲笑するように彼は言葉を吐き捨てた。


「まぁ、座れよ。話そうぜ」



私は、目の前の知らない何かに対する恐怖から言葉が喉を通って来なかった。



彼はこんな物言いをする人だったのかもしれない。ただ、私はその言葉を向けられたことはなかった。




私は黙ってパイプ椅子に腰をかけた




「お前はなんでここに入院してんだ」



私の服装からお見舞いに来たわけではないとわかっての言葉だろうが、そこにはとても温厚な会話をするつもりのないトゲのある言葉に聞こえた。



「あ、えっと。その…」

しどろもどろでとても会話にならない。



春樹は大きく溜息をついた。



「ま、そんなことどうでもいいか。」


彼はやれやれと言わんばかりに話し出した。



「なんで俺の病室に来たんだ?用があったんだろ」


「……」



「なんも喋らねぇのかよ。ったく」



人間の恐怖という感情は恐ろしいもので、

全ての思考回路を停止させ、体を動かすことすらままならなくさせる。

また座って動かない体はこの場から逃げ出すことすら出来ないのであった。



「同じ病気持ちで傷の舐め合いにでも来たのかよ。気持ち悪い」



「……」



そうか。春樹は

ハルキストは、荒んでしまったのか。


自身の病気、それも白血病ともなるとその痛みは到底理解できないものだろう。



これまでどれだけの同級生や知人から応援の言葉を受けたことか

その言葉がどれだけ軽い言葉に感じたことか


その言葉を受けた彼がどんな風にその場を取り繕ったか。




健常な人間には到底理解できないことであろう。




「ハルキスト」


「なんだよ。てか、その呼び方何なんだよ」


彼は敵意でもって自分を保っていたのだろう



「これから話すことは、到底理解できない話かもしれないけど、聞いて欲しいんだ」



私を取り巻いた恐怖の感情は失せていた。


私は全てを話すことにした。

本来の人生とその終わり


そして、これまで私の身に起きた全ての出来事を。




私の親友と呼べる彼に全て。


これまでの人生を振り返った時に

皆さんはいくつ後悔を思い出せるでしょうか?



そう多くの後悔を鮮明に思い出すことはないのではないでしょうか?


思い出の切れ端を頼りにすれば出てくる後悔は除くと、私の後悔は2つほどありました。



一つは、大学時代の友人についてですが


多分今当時をやり直せるとしても、大して結果は変わらないと感じています。



後悔は点でなく線で出来た因果関係の産物であって、決して正解があるものではないと考えています。



以前にも述べたとおり、私は早くに離婚したことでもう一つの後悔を残しているのですが、


究極突き詰めると、やり直すとしたら結婚しないことが正解だったのかもしれませんが、

当時の自分の幸福感を得ない未来を選択してまで選ぶべき選択肢だったかというと

やはりこれが正解とは思えないです。



今回の春樹の心情は、少し自分の後悔とそれに伴う心情を重ねてみました。



自身の感情の防波堤が決壊する瞬間は、きっと当人も考えてないタイミングで考えてもいない相手にぶつけてしまうものなのかもしれないです。


私の場合は、酔った勢いで感情を吐露していたので相手がどう受け止めたかまでは計り知れませんでした。



…長々と書きましたが何が言いたいかというと

後悔することがあったとしても

多分違う選択肢を取っても大して変わらないと思うから、自分を責めないで忘れるくらいの人生にして行こう。


という話です。



ま、忘れてない私がいうのも野暮ですが笑




一つ目の後悔に関しては、年月が経って相手に会う機会があった際に正面から謝罪して、自分だけでもスッキリしようかと思ってます。


そこまで相手のことを考えるほどお人好しではないので。



長くなりましたがこれで。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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