錯綜する世界と進み続ける時間⑧
「…っ…ふぅ…」
人間の身体とはなんとも脆いものであろうか
たった1.2ヶ月動かさないだけで筋力が低下して支えなしで歩けない身体になる。
皮肉にも人生の最後の頃の方が四肢が動いていたかもしれない。
「相トさんもう少し!頑張ってー!」
私の頑張る動力は応援してくれる看護師さんの素敵な笑顔に応えることそれ一つに他ならない。
「お疲れ様!だいぶ速くなってきたね。」
満面の笑みを向ける彼女に、気恥ずかしさから真っ直ぐ向き合うことが出来なかった。
「いや…こんくらい…ふ、普通ですよ…」
顔を赤らめながらも強がる様に男らしさを表現していたのだろう。我ながら恥ずかしいことこの上ない。
「ふーん。じゃあ次もっと速く行こうか」
冷たい声色と共に私を覗き込む顔がそこにはあった。
「あ、茜さん…こんにちは。」
「鼻の下伸びてる悟くんこんにちは。」
ハハハ…
笑うしかなかった
「…で?調子はどう?」
「茜さんが重りを追加するまでは好調でした…」
「ん?」
「あ、いえなんでもありません。」
「そ♪」
「……」
弱みを握られた夫とはこんな雰囲気なのだろうか。
側からはおしどり夫婦とか言われるんだろうなぁ…でも鴛鴦って雄が美しいフォルムだからこの場合逆なのかなぁ…
いや、そもそも夫婦はおろか彼女でもないし
今思うと、私たちの関係はなんなのだろう
友達…というには私は踏み込んでしまったような気がするし
恋人…ではないだろう返事もらってないし
「あ、あのさ…」
「んー?♪」
久しく見たことのない彼女の笑みに私はつまらない問題の解を出すことをやめた。
「ねぇ…」
リハビリ場から出るときに茜が私を呼び止めた
「この後デートしよっか!」
世の問題は、解かれるためにあるのだと改めて思い知った。
当然私に拒否権はなく、看護師さんも何かを察知したのか笑顔で私たちを送り出してくれた。
最も私は車椅子で茜に押されながらの散歩という味気ないものではあったが
デートという響きに私の心は揺り動かされるのだった
デートって響きいいですよね。
デートなんていつぶりだろう…
。⚪︎○
思い出せる範囲では2019年はないかなぁ…
あと、こういう女の子って可愛いですよね。
って人を体現してみました。
踏まえて私はMなんだと確認しました。
なんの報告だろう笑




