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錯綜する世界と進み続ける時間⑦



ハルキスト


小島春樹


私の人生を物語る上で欠かせない存在である


これまでの人生もそうであるし一巡目の人生でも彼という存在は『灯台』であった。

その彼の存在に気づけなかった事実

そして彼の存在しない世界という事実は

私の精神状態を狂わすのにふさわしいものであった。



「ハルキスト…」


私は病室の天井を眺めながら呟いた。

「相トさんここのところハルキストってボヤいてはボーッとしてるのよね…」

「後遺症なのかしらね…」


看護師達の噂話は私の耳によく届く

自分の噂はよく聞こえるとは言ったものだ。



『ユウキ』

悪戯に笑いながら呼びかける彼の姿が懐かしい。


そもそもの彼との出会いは高校1年生の春

新しい環境に皆が警戒心を持つ入学式の朝のことだった。






「なんだ?陰気臭いクラスだな。」


生意気そうな青年は、教室に入るなり一言発した。


後の級友からのヘイトを一点に集めながら彼は自分の席に着いた

私はというと、なんとも目立つことをする人間と同じクラスになったものだ

その程度の認識だけを抱いていた。


「俺は春樹。小島春樹って言うんだわよろしく!」

隣の席のヘイトを向けていない女の子に話しかける

「あ…どうも。」



後に彼女が郡山 葵であることが判明するのはもうしばらく後の話だ。

一巡目の彼女は目立つことはないものの端正な顔立ちということもあり、ハルキストは潜在的に仲良くなろうとしたのだろう。


こういう部分がしたたかでズル賢いやつだと今でも尚思う。



最初こそハルキストにヘイトを向けていた生徒も、次第にハルキストの対人スキルに巻き込まれて気がつけば受け入れられ友人となっていた。


悉く小島春樹という男は優秀であった。



そんな私と彼がこれまでの関係になったのは

6月の体育祭のことだった。



「なぁ…なんで俺はお前と二人三脚しなきゃならんのかな…」

入場門で待っている際に、私に愚痴を漏らした。


私に聞かれても知ったことではないし、背丈が近いこともあるから仕方がないであろう

当時の私にはそれを言うだけの器も度胸も持ち合わせてはいなかった。


「強いて言えば、運だろうな…」

聞こえるか聞こえないかの声量で呟いた言葉にすかさず彼は返答した。


「悟り開けば良かったんかな…」


「いや、己が神仏になってどうすんだよ。」



このワンラリーだった。

この彼の何気ないボケを拾ったが始まりで私たちは一気に仲良くなった。


最も彼が私を気に入ったと言うべきだろうか



「腹減ったわー。ちょドラえもん作ってくれへん?なんでも料理出せるアレ欲しいわ今まさに。」


「お前の三大欲求の為に世紀の発明出来たら学生なんてやめてるわ」




「ちょ足痛いから早退するって先生に言ってくれへん?」

「朝一登校して足痛いんやったら早退より休憩やろ。てかそもそも踵返して家帰っときーや」



彼はいつも突拍子も無いネタ振りをしてきて私はあしらうようにそれを返していた。


気がつくと変なワンセットで過ごすようになっていた…




今思い返すと私たちの他愛ない話を、後ろの席の茜が聞いていたのかもしれない

それで私の存在を認知したのかもしれない。



いや、それはないか。

この世界にハルキストがいないとなると私とハルキストの絡みを知る茜はこの世界に存在しない。





「相トさん?リハビリの時間ですよ?」

ふと、かけられた声で現実に呼び戻された私は重い腰を浮かして部屋を出た。




途中でハルキストのしょうもないボケが聞こえたような気がしたが、私の空耳であろうと思い立ち止まる事すらしなかった。







友人とはいつから始まるんでしょうかね。

最近高校時代の友人と会う機会があり、お酒を共にしたのですが

何年来かで会う彼は、当時から性格が丸くなっていました。


きっかけとしては同じ部活の仲間だったのですが、彼はとても人望が厚く人気がありました。


当時可愛いこと付き合ってた経緯なんかもあり、彼と言う人間に羨ましさを覚え少しだけ距離を感じていました。



そんな過去を彼に吐露したところで一言

「お前は俺と言う人間をなんだと思ったんだよ。同じ人間だろ」


彼はそう言いました。


人に垣根を作るのは、自己卑下してる自分なんだなと。

友人とはそう言う概念に囚われないものなんだと実感しました。



陽キャラ陰キャラなど括りをつける人間は多いですが

友人として見た際にその括りに意味はないんだなと。



すごく綺麗にまとめようとしましたが、ふわふわした感じになりましたね笑



最後まで読んでいただきありがとうございます。

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