錯綜する世界と進み続ける時間③
『本来であれば…なのですが、悟くんの容態は意識を取り戻すことはありません。ですが、彼は私の呼びかけに反応を示しました。』
『決して今の彼の容態は良いとは言えませんが、回復の可能性が無いわけでも無さそうです。』
『最も現代医学では証明は出来ませんが、彼の精神に琴線を響かせる出来事が、彼の回復に繋がるかもしれません…』
「なぁ…相ト。」
茜が私を見つめている。
私は首だけ彼女に向けた
「私のせいなのかな…」
私に向けていた目を逸らして彼女は呟いた
「私があんたと関わったからこうなっちゃったのかな…だとしたら私は。私は…」
私の目には涙を浮かべる有馬茜が映っていた
それはあまりに儚げで
あまりに美しいものだった。
「私が学校の女連中に目つけられてるのはあんたも知ってるよね。昔からずっとそうなんだ…多分小学校からかな?」
涙を拭いながら茜は話を続けた。
「ほら私こんなだろ?どうしても女の子のキャピキャピした感じについていけなくてよ。小学校なんかだと率先してドッヂボール引っ張ってくポジションでさ。」
自虐的に笑う彼女を見るのは辛かった
「あの頃はまだ良いんだ。ただの女子の輪に入ってないことを揶揄されてるだけだからさ。
男連中もガキだから遊び仲間が一人増えたって何も思いやしないしさ。」
次第に彼女の目に影が落ちていく。
「中学に上がると状況は一変してさ…
輪に入ってないことに加えて、恋愛沙汰がまじってくるんだよな。
ほら!私って中身に合わず見た目は綺麗だからさ!ははは…」
彼女の冗談にいつもの迫力は残っていなかった。
「んで、自然と男子の輪にいる私は嫉妬やっかみの対象になるわけ。おかしいだろ?ただこの顔に生まれてこの性格で生きてるだけで勝手に嫌われるんだぜ?」
恐らく、彼女の場合は日頃の対応でマイナス点が付いていた所に、女子人気の高い男子と一緒にいたのだろう…
人生を彼女の10倍近く生きてる私にはその結末が造作もなく分かる。
ただ、
普通の10代の女の子にはこの事実はあまりに残酷で、あまりに厳しいものに違いない。
「それでも耐えて耐えて…中学3年に上がる頃には身体つきもすっかり女になってきてよ!
また、歯車が狂い出すんだ…」
言うまでもなく男が性に目覚め、彼女がその毒牙に落ちたのだろう。
火を見るよりも明らかな結末を、
ただただ真っ直ぐと彼女を見つめて聞いていた。
「どれだけ強がっても所詮女は女だろ?
力では男に勝てねぇんだよ…
その日を境に、私は女としての生き方を辞めたんだ。」
簡単に告げられた彼女の一言にはどれだけの覚悟を要したか、私程度の人間には測り知れぬことだろう。
15の女の子にとってこの決断がどれだけ辛いことか…
「それからはあんたも知っての通りでさ。一部の嫌味な女どもだけしか近寄ってこないようになったわけ。」
「だから正直…あんたという存在は私にとって異質でさ。
特に出会い頭からヘラヘラしてて…き、綺麗とか言ってくるしさ。正直訳わかんなかったの。」
耳が痛い…
最も彼女のいう「出会い頭」は今回のサイクルでの話だ。
私とてそんな軟派者な覚えはない。
「それも急にだろ??それまでクラスでも大人しい冴えない感じのやつがさ!
てっきり罰ゲームかなんかだと思ってたくらいだよ…」
返す言葉がない…
最も今の私には動かせる口がないのだが
「でも、どこかあんたの姿が私の親父に似ててさ…なんか目が離せなかったんだよ。」
彼女は遠き日の思い出を呼び起こすかのように窓の外を見つめていた。
私もつられて窓へと首を傾けていた。
暑い!!
夏ですねもはや。
ここに長々と書く時間あったら書けよって話ですよね




