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茜空に何を思う⑤


翌朝の空模様と同様に私の心は薄暗かった。

今日補習に出れば、一週間の休暇が与えられる。

分かってはいたが、如何せん学校に行きたくなかった。


有馬茜と顔を合わせたくなかった。


結局、あれから茜は黙々とポテトを平らげて、何も言わずに帰って行った。

その様を見た周りの学生の目には、女の子に置いてかれた私の様子より、

私を置いて行った彼女の無表情に恐れを覚えていた。


そしてかく言う私も、

その表情を間近で見て恐怖していた。


何故、話しかけたのか。

何故、放課後に時間を貰ったのか。

何故、彼女は来てくれたのか。


何一つ分からないまま朝を迎え、気分は当然ブルーである。



私は、喉に指を突っ込み、盛大な嗚咽音を轟かせた。









バレてしまった。

我が母親ながら見事な洞察力であった。

流石に嗚咽音に心配して来るも、昨晩の浮かない表情と不自然に先端だけ湿った指を見て、静かにGOサインを出してきた。


サボる事を容認しない決断は、愛故であることは、言わずもがな分かっていた。

ただ、それを差し引いても


「休みたかった……」



既視感を感じた。

もしかしたら、当時の私も仮病を使おうとしたのであろうか。

逃げ出し癖が何年生きても変わらない事に私は酷くショックを受けた。



制服に身を纏い、通学路を歩いた。

道中、蒸し暑さに耐えかねてコンビニで飲み物を買った。

店の前で一服していると、ガラスに映る自分と目があった。


「はは…酷い顔してんなぁ。」

思わず自分に笑いかけてみせた




教室の前に立つと、昨日の彼女の顔が思い起こされた。

あの冷えた目と対照的な口元

扉の向こうの彼女に再びその顔を向けられることを考えると足がすくんでしまう



「おい!何やってるんだ早く入らんか!」

背中に鈍い痛みが走った。


「うるさいな。ハルキ…」

振り返りながら教員と目が合った。

教員は目を丸くしたかと思うと、次の瞬間に再び教科書で私の頭を叩いた。


「教師に生意気な口を聞くな!」

私は頭を抑えながら、教室に入る彼の後ろ姿をただ目で追っていた。





今、

私は誰と勘違いをしたのだろう…





その様子を淡々と眺める茜と目が合い、

私はいそいそと席に逃げた。





その日の講義後、彼女は脇目も振らずに教室を後にした。



私は、何を求むでもなく寄り道をして家に帰った。

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