茜空に何を思う④
有馬 茜と入るファストフードは不思議な光景だった。
私と茜の横並びの光景に違和感を感じていたのは、私だけでは無かった。
部活終わりや補習帰りの学生の目にも同様に感じていたようだ。私はさておき茜はそこそこ有名人なので、このアベックに皆の目が点になっていた。
「あんた…奢ってくれるんでしょ?」
少し悪戯な笑顔で微笑みかけてくる彼女は、普段の彼女のイメージからかけ離れた『無邪気な女の子』そのものだった。
「ほ、ほどほどにしてくれよ…」
財布の中身を見ながら私は頭を掻いた。
財布をだいぶ軽くした状態で、私達は席に着いた。
「……で…話って何?」
ポテトをつまみながら話を切り出した。
「え、えっとね……」
弱った
正直自分でも何故仲良くなりたいと思ったか分からない。
分からないが、一つだけ言えるのは彼女を一人にしておけない。
私の直感がそうさせたということだ
『あおい』
突然頭に単語が浮かんだ。
あおい…青い?
「…何もないなら帰るよ?」
苛立つ茜の姿を前に思いついた事を口にした。
「あ、えっと!実家はどこなの??」
私は自分を恥じた。
大学生ならまだしも高校生が実家を聞かれても近隣としか言いようがないであろうに。
「は?」
彼女も呆れた表情を見せる
「あ、いや!僕のお爺ちゃんが関西の人間だからさ。有馬さんはどうかな…って」
話しながら彼女の顔が曇るのに気がついた。
何と形容すれば良いか。
口だけで苛立ちを表現する様は、まるで眼神経を麻痺したようにすら感じた。
「…そんなん聞いてどうすんだよ」
相変わらずなつっけんどんとは様相が異なった。地雷を踏んでしまったのだろうか。
「あ、いや…ごめん。」
私は黙り飲み物を啜った。
幾ばくかの沈黙が流れたが彼女はそこに指摘をすることは無かった。
ただ二人の間に見えない壁が建立されたのは私でなくても分かるほどであった。
私は壁の建設材料を提供してしまい、ただ作業工程を眺めることしかできなかった。




