少年老い易く学成り難し②
久しぶりのハルキストとの再会を
駅前のマクドナ○ドで過ごしていた頃
私はある事に気づいた。
味覚、痛覚などの感覚があった。
走馬灯の定義は分からないが
恐らくこんな長時間、感覚を共に過ごせるものではないだろうという自信はある。
もしかして。
いや、まさか。
でも、でももしかすると。
いやいや。
頭を過ぎった奇想天外な想像を己で否定する
そんな不思議なやり取りが4回転した頃
『今の私は記憶を持って過去に帰ってきた』
そう定義つけることにした。
ハルキストとの会話は聞いたことがあるような
新鮮味があるような不思議な感覚になっていたが
記憶を持って過去に来たと定義つけたことで
些細な違和感はさして気にならなくなっていた。
そうか…俺、高校生になったんだなぁ……
そう思うと同時に私は一つのことを思い出した
私の生前最後の手記に書いた一言。
もしかすると、神様からのボーナスゲームなのか
若くして命を落とす私へのささやかな贈物なのか
そう考えるとこの摩訶不思議な現象にも
少しばかり前向きに考えることが出来る。
「ハルキストさ。俺たち絶対彼女作ろうな!」
直前までのハルキストの会話を遮り放った一言は
「お、おお…」
ハルキストの苦笑いと共に空に消えた。
そうだ。私は学生なのだ!
「いい歳して」という前置詞で、女の人との接触を不審がられる心配もない。
この年齢ならなんでも許される。
私は心に誓った。
病床に伏していた頃の私の野望を叶えよう。
そして大人の階段を!
ー23年後ー
私はベッドの上に伏していた。
「あれ?」
私は。
私は。
何も変えることが出来なかった。
私は一度目の人生と大差なく
むしろ少し悪い形で、この日を迎えた。
「ははは…私の人生はこんなものか。」
齢40にして己の不甲斐なさに笑うしかなかった。
私は手記を手に取り、筆を走らせた。
そして…
『素敵な彼女が欲しかった』
その一文を書くと同時に
私の身体は力無く崩れ落ちた。