いつだって向日葵は太陽に向く⑧
異変とは計らずも突然に訪れるものである。
それはある朝目が覚めた時であったり
それは何てことない日常の一つであったり
ただ、今回の異変の原因は言うまでもなく
私の選択にあるのだろう。
あの日、あの帰り道から
彼女とは大きな距離が出来てしまった。
それまでは冷やかしで私達を茶化してきた級友でさえも手を止めるほどに。
まるでハブられているかのように
彼女は私を避けるようになった。
私は、その現状に驚いてはいなかった。
いや厳密には驚いていたが、ある程度想定していた事態ということもあり、精神的ダメージは抑えられている。
あの日、あの質問に
なんて返すのが正解だったんだろう。
「あのー…ユウキくん。」
翠さんが事態を重く受け止めたのか、私に声を掛けてきた。
「も、もしかしてあの出かけた日の帰りに2人に何かあったの?」
そうだった…翠さんは私の片思いを応援している立場だったのを忘れていた。
「えっと……まぁその後にちょっとね。」
まともに話すのは、何か違うと思い真実を飲み込んだ。
「そうだったんだ…えっと、こんな時に言うのもあれなんだけど、実はね…」
「知ってるよ。ハルキストと付き合い始めたんだろ?おめでとう。」
本当に凄いタイミングで放り込んでくる子だな。
思わず笑ってしまった
「え、あぁ、ありがとう…
ってそうじゃなくてね!実は葵ちゃんのことで。」
ん?
「郡山さんがどうかしたの?」
彼女の件なら尚のこと今放っておいてほしいところだが…
「実はね。……………」
この時、私の頭の中で全てのピースが繋がった。
あの日の空虚な顔も
あの日の思いつめた表情も
あれからの彼女の対応も
気づいてしまった。
私の心のモヤモヤの正体も
「……教えてくれてありがとう。」
心のつっかえが取れたことで
久しぶりに空を見上げた。
夏の暑い日差しが突き刺さっていた。
「そっかそっか。そういうことか。」
自然と涙が溢れてきた。
間違いなく、私は彼女のことが好きである。
そしてそれが故に本能的に何かに気づいている自分がいたのだろう。
その謎が解けた事で、己の取るべき行動が分かった。
「郡山さん……あ、いや。
葵のこと見なかった?」
全てを話す時が来たようだ。
「…体育館の裏に呼び出されてたよ。」
奇しくも最初に会った場所にいるのか。
「そっか。ありがとう!」
「い、行ってどうするの??」
私は去り際に笑顔で強がってみせた。
「ちょっと、告白してくるよ。」
私は走った。
途中階段で足を滑らせて、こけそうになりながらも
それでも足を止めなかった。
己の息が切れる頃に体育館裏に辿り着いた。
また前回と同じ位置から、前回と同じ場所の
前回と同じ光景を、固唾を飲んで見ていた。
ただ今回は前回の告白現場とは
違った結末になるであろうが。
「呼び出してごめんね。どうしても話しておきたいことがあってさ。」
「いいえ。あたし…私も話したいことがあったんです。」
そして、私はこの現場を
見届けようと心に決めたのだ。
「日向先輩。」
どれだけ傷つくことになろうとも。




