いつだって向日葵は太陽に向く③
「はぁ…」
天気はあいにくの雨だった。
「なんか面倒だなぁ…」
Wデートとは名ばかりの太鼓持ちだ。
最も私の持つ太鼓にはそこまでの期待は乗っかっていないだろうが
霧雨とも小雨とも表現しづらい雨に打たれながらアウトレットに向けて家を出た。
「おそーーい!」
駅の改札を出てすぐに甲高い声が響いた。
「ごめんごめん。ちょっと電車遅れちゃって…まだ郡山さんだけ?」
やや膨れ面でこちらを見てくる彼女を尻目に周りを見渡した。
「そだよ!だってゆーきには早めに来てもらったからね!」
だとしたら遅くないんじゃないですか?
むしろ約束3分前に着いたけど、一体いつから待ってたんだ…
「えっと…もしかして作戦会議?」
まぁそれしか無いよな
彼女は返事をするでもなく満面の笑みで私の問いに返してきた。
「それもだけどさー。なんか言うことないの?」
何かを訴えるように上目遣いでこちらを見てくる。やめてやめて。可愛いからそれ可愛いから。
「あ」
なるほど
「えっと、私服、か、可愛いね」
流石とでも言うだろうか。伊達に人生を百何年も経験している癖に、女の子の私服を褒めるという動作でさえ
このドモり様。
筋金入りのモテなさが露呈されてしまった。
「え、あぁ。普通に褒めてくれるんだね…ちょっと意外だったかも。」
聞いてきた本人が照れるな。
こっちまで恥ずかしいじゃん
駅前でモジモジしてる男女の姿はまるでこれから初デートとでも言わんばかりに映ったことだろう。
「それで。今日はどうするの?」
仕切り直すように流れを断ち切った
「どう…って、考えてきてないの?」
呆れた顔で私を見てきた。
モテない男の子は女の子と遊ぶプラン一つ考えるのだって死活問題なのに、ましてや太鼓持ちなんて…何すりゃいいんだい…
私は空笑いで誤魔化した。
「本当にゆーきってこういうのダメだね。」
渋々彼女はプランを説明してくれた
あるなら先に言ってよ…
「ほ、本当にこれやるの…?」
「これくらいしなきゃ、小島くんにはダメでしょ!」
『・みんなで洋服選び(女子の水着選びも)
・フードコートでお昼ご飯(翠ちゃんと小島くんの距離縮める!)
・ゲームセンターでプリ(上手いこと2ショットも撮る!)
・自然と二人きりにしてハケる(翠ちゃん告白か??)』
なんだこれ…
昨今の高校生ってのはこんなデートをしているのか…
というか作戦を律儀にも紙に書いて来るキャラには見えなかったが、変なとこマメだな。
()の中身の一言が女の子らしい。
「…てか、これ何を手伝えばいいの??」
これ、正直3人でも出来ることなんじゃ…
「ゆーきは小島くんを誘導するの!
お昼とか放っておいたら男2人で並ぶでしょ?だから自分から進んであたしの隣に来るの!お分かり?」
なるほど。
素直に感心してしまった
確かにハルキストはともかく、私は何も言われていなければ自然とハルキストと横並び一線を決め込んでいただろう。
流石は郡山葵 といったところか。
「それじゃあプリクラ撮っていい感じになったら僕ら2人はどうやって別行動するの?」
ここが一番の難所だろう…
どうやったって不自然だ。漫画じゃあるまい
「そこは任せて!私に考えがあるから!」
その考えを聞いてるんですよー郡山さん。
…などとは言えず、名ばかりの作戦会議はものの数分で終わり、2人が来るまでの間
私と彼女の間には、不思議な沈黙が流れた。
「…雨強くなってきたね。」
「そーだね」
彼女は携帯をいじるでもなく、積極的に会話を広げるでもなく
そこはかとなく無機質な返事だった。
気まずい…
今まで彼女が会話をリードしてくれていただけに突然の長い間に耐えられない!
だが、会話のストックは持ち合わせていない
しばらくの沈黙の後に
「ゆーき。実はさ…」
重い口を開いた時だった
いつ振りだろうか。彼女は遠い目をして駅をぼんやり眺めていた。
この目を私は覚えている
あの体育館裏の告白現場でみたあの目だ。
あの、目の前の事象を作業のように片付けるような
『あの目』
ただ月日を経て『あの目』に対する見え方が変わっていた
どこか物悲しいような、それでいて気持ちを抑え込んでいるような
とても寂しい目だった。
思わずその目に見惚れてしまった
あの時と全く逆の感情が私を支配していた。
「おーーーい!悪い悪い遅くなっちまった!」
改札をくぐる前から陽気なハルキストがこちらに叫んでいた。
我に返った。
「おっせーよ」
多分自然に振舞えていたと思う。
「吉崎さんも遅延で少し遅れるってよ!どうする?暑いし喫茶店でも入る?」
我が友ではあるが、どうして陽気な奴は時間があるとすぐお茶したがるんだ…
ここで待てばいいだろう。
「迷子になってもあれだからここで待ってよ。」
いつになく冷静な郡山葵の対応と先程の件も相まって、
私は彼女の顔を見れなくなった。
10分後、翠さんが到着してからフードコートに着くまで
結局男女で別れて歩くことになったのだが
今になって思うと、私が自然と郡山葵を避けていたのかもしれない。
「あたしとゆーきで買ってくるから2人は座って待っててー!」
郡山葵の完璧な采配が功を奏し、自然とフードコートにあの2人を配置することに成功したが
私と彼女の間の距離も計算することは
最後まで、私にも彼女にも出来なかった。
なんか連続投稿が癖になってきました。
こんばんは。
一つ書いた後に、他の人の小説を見ては
こういう発想があるのか。と感心してしまうのですが、
私も人の事を言えたものではないですが
最近は、異世界ものが流行ってますね笑
だいたいタイトルで癖を出してくる異世界ものが多くて、どれもこれも目を引かれる事でしょう。
そして色んな人に共通して言えるのが
だいたいみんな死んで異世界来るよね!
これもだけど。
今思うとこれの先駆けした人天才だよね!
そして、だいたい1話2話だけ進んでる人を見ると
なんか妙な親近感を覚えてつい読んでしまう。
そんな私の呟きでした。
それでは。