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向日葵の咲き乱れる夏に⑨

それからというもの


「ユウキー。ご飯食ーべよ。」


「ゆーき。服見に行こうよ」

「ゆーき。あそぼーよー」


またいつもの元マドンナ郡山葵の姿だった。

なんだったんだラーメン屋の顔は…


あの日、ラーメン屋での眼鏡姿の彼女を思い出して今の彼女の姿と見比べる。



正直なことを言うとあの日の彼女の様相には不思議と心惹かれるものがあった。

これは当時の彼女に対する憧れが幾ばくか残っているからなのだろうか。

それとも…



イメチェンって凄いな…



不思議な引っ掛かりを残しながら

あくまで私は鈍感主人公を演じてみた。


「え、ああ。うん行こうか!」



この状況における鈍感の定義は何だろう

今回私が取った選択は

『人見知りが心を開いて仲良くなった相手の誘いは素直に嬉しいものの、異性という壁を意識して一旦躊躇する』

という回り道だったわけだが。


今思うと、ただ女の子を意識してる男の子に見えなくもない。



そんな私の思慮を気にも止めず、彼女は私を引っ張って駅前のPARCOへと歩き出した。




あれから周りの環境も少しずつ変化してきていた。

郡山葵は引き続きクラスのマドンナの位置は奪われ、リーダー格からは除け者にされている。

しかし、それを物ともせず私たちと絡んでいることから周りはいつしか『場所に囚われない天真爛漫な少女』という認識で、以前と然程変わらぬ接し方に戻ってきていた。


当然それには、クラスの女子からの反感は避けられないが

そこで出てくるのがハルキストだ。


ハルキストが私と彼女の間柄を気遣って距離を保つようになってからというもの

密かなハルキストファンの女の子は安堵し、その矛先がどう巡ったか彼女と仲良くする方向に向かっていたのだ。


「あーー…女の子なんてそんなものだよー

小島くん結構人気あったからさ。底なしの明るさとあの顔でしょ?

やっぱ私が一緒の輪にいると穿った目で見られちゃうんだよねー。」


え?それはあれですか?

『何よあの女!私の彼に色目使って!』

的なアレですか?

どうやら私の知らない所でしっかりラブコメ展開は起きていたようだ。

最も、その輪の私について1㎜も言及されてない切なさは一旦押し殺しておこう…


「最近、小島くん付き合い悪いじゃん?それで狙いが小島くんじゃないと分かってからは急に仲良くなってきたの!


まぁ牽制の意味もあるんだろうけどねー。」



ふと、彼女の女の子らしくない

サバサバした一面に面食らったが

こういう計算までも読み通して、自分の立場を安定させることに関しては

元々長けていた子ではあったし

何より女の子は大概こんなものなのかもしれない。



「それでさー!あたしとゆーきをくっつける協力するとか言ってきたんだよねー。」






ん?


思わず足を止めて先を歩く彼女の背を目で追ってしまった。




しばしの沈黙が流れた。

駅前に近づいていることから遠巻きに喧騒が響く位置にはあったが

私の耳には凪の如く、己の鼓動だけが響いていた。

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