向日葵の咲き乱れる夏に⑧
あの挨拶を機に、私達3人に少しずつ変化が現れた
ハルキストは少しずつ私達から距離を置いた。
その行動の真意は定かではないが彼なりに気を遣ったのではないか。と考える
で、彼が気を遣うきっかけとなっているもう1人の女、
郡山葵はというと。
「ユウキ!一緒かーえろ。」
このような状態である。
どういう訳か私に懐いてしまった。
最も今までも絡んできていたので、親しみを持ってくれていなかった訳ではないのだが
あのハルキストが気を遣うくらいには
分かりやすく
シンプルに
例え私が鈍感だとしても気づかない方が嘘と言わんばかりに
私に懐いてきた。
ある日、ハルキストに一人で呼び出された
「やっぱお前ら付き合ってんの?」
やっぱ。ってなんだよ
何がやっぱなんだ
ということは、今までも疑っていたのだろうか
恥ずかしい話だが、今まで8周もしてきて
こういう浮ついた話を噂されるのは人生で初めてだ。
正直、ハルキストは2枚目で
喋らなければモテるタイプである。
そんな彼に密かに想いを寄せる女子もおり
これまでの人生で、その者たちが陰ながら想っている姿は視界の片隅に捉えているほどであった。
だが、私にはそういった噂は一切無かった。
最も本人の耳に入る噂は噂と言いづらいが
それでも片鱗すら感じれなかった
それがどうだ。
一体どこに分岐点があったのか見当もつかないが、どうやら私はマドンナに好かれているらしい。
いや、本当に好かれているかは定かではない
ここは一つ
世のラブコメ漫画の主人公を踏襲させて頂いて気づかない姿勢を模倣するとしよう。
「俺と郡山が?そんな夢みたいな話があったら、現実に帰ってこなくていいすらあるな!」
勿論現実に起きていることは承知している。
これで変に偉そうには見えない
ましてや、調子にも乗ってないだろう。
完璧だ!
「あ、あぁ…そっか。ならいいんだ。」
ハルキストは少し狼狽えて話を終わらせた。
恐らく自覚させてモテられるのが癪に触るのだろうか?全く、長年友達をやってきていたが、ハルキストのこんな器の小さい瞬間を拝んでしまうとは…
友として情けないな。
「それより今日は3人で帰りにラーメンでも行かないか?」
さりげなくハルキストを巻き込むことで鈍感さに追い打ちをかけてみた。
「いや、俺はいいよ…二人で行ってこいよ」
ハルキストは申し訳なさそうに私に言った。
ハルキストへの社交辞令のお誘いの件を一通り済ませ、放課後に郡山葵とラーメンに行った。
高校から徒歩7分にある豚骨らーめんのお店
高校生御用達のお店だ。
当然、私は普段一人ですら行くことはない。
ましてやこんな場に女の子と来てる
それもマドンナ郡山葵となると
翌日の見出しになることだろう
だが、そんな私も余裕が出来てからは
むしろそのゴシップすら鈍感で押し通せると信じて席に腰かけた。
「あーー。コンタクトずれちゃったー。
もういいや外しちゃおー。」
そういうと彼女はコンタクトを外した
相当目が悪いのか、睨むようにこちらを見てくる。
「今はいいけど、帰りは大丈夫?」
無論、送ってくよ。という前段階である。
以前も申し上げたが8周もしてくると
あらゆるパターンの予習は出来ているのだ。
(実践は今回が初だが)
「んーー大丈夫!メガネ普段から持ってるから。ただメイクの感じに合わないからなぁ…」
そういうとカバンから徐ろにメガネを取り出し掛けた。
「……!」
その姿は…
「変じゃない?大丈夫??」
私は彼女を見つめたまま固まっていた。
「ちょっとー!なんか言ってよ!」
「え?あ、あぁ、に、似合ってるよ。」
メガネを掛けた彼女の姿は
髪型や服装は違えど
1周目の
あの教室でも静かだった彼女そのものだった
そう考えると…
珍しく着崩していない制服と相まって違和感が増加してきた。
気のせいか。
彼女の姿が
マドンナ郡山葵ではなく
地味な女の子郡山さん
その人に感じてき始めたのだった。