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少女達は今日も生きている④


その夜は寝つけなかった。

失恋…なのだろうかこれは

いや、失恋というにはあまりに杜撰な愛の形だったのかもしれない。


眩しい月明かりに照らされることが辛くなりカーテンを勢いよく閉めた。


まるで自分の心を模したかのようにすら覚えて、そのことに少し笑いが溢れた。

笑いと共に抑えきれなくなった涙が沸々と溢れ出る。

ついぞ帰路では流れなかった涙がとめどなく頬を伝う。


こんな事って…


こんな思いがしたくて頑張ってきたわけじゃないのに。



無機質な家に長く居たいと思ったことは一度としてなかった私が

今回ばかりは学校に行く気分になれない。





「お腹すいた」




私はコンビニに行くことにした。

建物の明かりが

人々の喧騒が

数多の笑い声が


先ほどまでの先輩の笑い声に重なってしまう。


気持ち悪い

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い




段々と眩暈がしてくるほどに追い込まれていることにこの時は気づきもしなかった。


最寄りのコンビニが視界に入る頃には

控えめに言って憔悴しているのがわかった。



「あ…」


思わず身体のバランスを崩した


…と思ったが倒れることはなかった




「だ、大丈夫かよ!」


私を支えた彼は

ひどく慌てた表情をしていた。



「あ…あ…」


私は声が出なかった。


「あ……あぁ……」


声が出るのが先か涙がこぼれるのが先か




「あぁぁぁぁぁ‼︎」


同時だった


支えてくれる彼に抱きつく形で私は声を上げて泣いた。

泣いて泣いて泣いて


鬱屈した気持ちが全て流れ出るかの如く声を上げた。




「いやぁ、弱ったなぁ…」

彼は困った声色を出したが、私を離そうとはしなかった。




どのくらい泣いていたのだろうか。

もうこれ以上出ないというほど涙を流し

喉が枯れたのではないかと思うほどに泣き叫んだ後に残った私は


これまでの私が嘲ていた"それ"になっていた。



「……」


突然の沈黙に途端に羞恥が込み上げる



「あ、あぁ…ご、ごめんね。」


我に帰ったように私は彼から離れる


が、彼は私の肩から手を離すことはなかった。




「只事じゃないんだろ?」


普段の彼からは見られないまっすぐな目線で私を見つめてくる。



「……」



言葉が出なかった。



「黙って聞くから話してみろよ。



全部」




当然私のこれまでを慮って言っているわけではないのはわかっていた。



ただ彼のまっすぐな優しさで全てが包まれるようだった。





「な。」




不思議と笑顔になっている自分がいた。



「うん。



ありがとう。小島くん」







月明かりに照らされる小島くんは


まるで白馬の王子様のように感じられた。

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