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少女達は今日も生きている②


私達は友達になった。

友達がこういう風にして出来るのかは知らないけど、

互いに思ってるのだからそれでいい気がする。




「その…ごめんね。」


「どうしたの?急に」


吉崎さん…翠ちゃんは首を傾げた。




「知ってたんだよね。先輩のこととか私のこととか。 それで翠ちゃんなりに止めようとしてくれてたんだよね。


私何も知らなくて酷いこと言った…」



今にして思えば、翠ちゃんが繰り返しをどの期間のループでしているのかは分からないけど

仲良くもない私を助けてくれるくらいだ


悪い子ではないのだろう。




「別にもういいよ。私も同じ立場だったら絶対聞き入れない自信があるもん。」



和やかな空気が私達の間に流れた。



それから私は翠ちゃんを私達のグループに交えた。




「翠ちゃん可愛いでしょ?」


小島くんと2人の時に探りを入れてみた。



「……んーまぁ……」

凄く煮え切らない態度に腹が立ち、彼に蹴りを入れた。





「翠ちゃん、今日暇!?」



私は私の知り得るメイク技術を彼女に伝授した


小島くんの評価は、昔の自分に対する評価のようで我慢ならなかった。





次の日、早速教えた通りにしてきた翠ちゃんの姿をみて教室の空気が少し変わった。




今まで彼女に見向きもしなかった男子達が陰で噂をしている。


彼女は眼鏡をやめてコンタクトにしたのだろうか、メイクと相まって別人のように輝いて見えている。




「お、おはよ。小島くん」


翠ちゃんもただのJKではない

きちんと打ち合わせ通り彼に挨拶をした。



「……」


小島くんは目を見開いて、彼女を見つめていた

明らかに昨日までのそれとは違った目だった。



翠ちゃんは照れ隠しか、返事を聞く前に席に戻っていった。




彼女の友達達に男ができたのかと冷やかされるほどには、彼女の改造はうまく行ったようだ。




「葵ちゃんのおかげなんだ。」


友達に話す彼女の声に

私は緩んでしまう頬を必死に隠していた。







それから私達は4人で日々を過ごした。



『私は、もう先輩とは関わらないようにするね。』



あの日翠ちゃんに宣言した通り、部活動にもあまり参加しない日々を過ごしていた。







「あ…」


たまたまユウキと2人でPARCOに行った日に

遠巻きに先輩の姿を見つけてしまった。




頭では分かっていたけど、やはり私のこの心臓は先輩のことを諦めきれていないようだ。




平常心、平常心。


大丈夫。私なら出来る。




「あ、日向先輩ー!」












その日の夜、一通のメールが届いた。



画面を見て私の心はまた揺れ動いた。




『これから会える?』




私は自制の効かない身体に連れて行かれるように、あの日の公園へと走り出していた。






「ごめんね。こんな時間に」



「いいえ、別に…」



先輩は帰宅途中だろうか

制服姿のまま私を待っていた。




「どうしたんですか?突然連絡くれたからびっくりしましたよー!」



今まで通りを装い明るく話した。



「郡山さんに会いたくなって。」



………


しばらく思考が停止していた。、




「最近部活にも来ないし、どうしたのかなと思ってね。」



少しの安堵と、止まらぬ胸の高揚を悟られぬように

私はベンチの少し離れた位置に腰掛けた。




「ごめんなさい。ちょっとサボっちゃってました。」



えへへと笑って流した。



「そっかー。」



そういうと先輩は立ち上がり、突然私の手を掴んだ



「ちょっと歩かない?」



私は顔を真っ赤にして固まった。

そして静かに頷いた





「僕は実はこの街には、中学の時に引っ越してきたんだよね。」


先輩は突然語り出した。

私の手を優しく握りながら



「その時、近所に一つ上の女の子がいてね。

僕の家、団地だから母親同士が自然と仲良くなるみたいなんだよね。」



どうやらその女の子とも母親同士から知り合い、仲良くなったらしい。



「その子さ、僕に女の子の服を着せるんだよね。似合うからって」


思い出話を話す先輩の声は少し楽しそうだった。




「そしたらある日、凄く可愛いワンピースを買ってもらったって僕に自慢をしてきたんだ。」



ただ先輩の目はどこか悲しそうだった。



「その姿を見た時、僕は多分初めて恋に落ちたんだと思う。」




私は、相槌を打ちながら苦々しい顔になっていた




「でも結局、その子はしばらくして引っ越してしまったんだ。」



そういうと先輩は立ち止まった。




「…その子が君にそっくりなんだ。郡山さん」



………


言葉が出てこなかった。

先輩の悲しそうな顔があの日の出会いを物語っているようだった。




そうかあの日先輩は

私をその子と見間違えて興味を持ってくれたのか…



少しの嬉しさと少しの悲しさから

私は思わず顔を背けた。




「そこからは君のことが気になってね。

君が園芸部に入った時は内心凄く驚いたよ。」




目の前に立つ先輩はとても儚げな

包み込んであげたい存在に思えた。




「…郡山さん。」


そう言うと握る手に力がこもった



先輩が真っ直ぐに私を見つめる




ふっと腕が引かれ先輩の胸に体が収まった。




思ってたより先輩はがっしりとしていた

華奢な男性かと思ってたけど

ちゃんと男の人なんだな…



気がつくと私は優しく抱きしめられていた




「…郡山さん」


耳元で優しく名前を呼ばれ、私は体が熱くなる


「…先輩」



胸の中で聞こえるか聞こえないかの声で言った。


そして私も先輩を抱きしめ返した






はじめてのキスは凄く優しいキスだった


まさか道の真ん中でキスをすることになるとは露ほど思わなかった。




ただ私の中を流れる何か快楽物質のようなものが、その常識的思考を麻痺させていた。



唇が離れた時、先輩は微笑んだ




たまらなく目の前の人が愛しく思えた

とても目の前の人が可愛く思えた



次のキスは私から向かった








自然と私は手を引かれて別の公園のベンチに辿り着き、

また2人で唇を奪い合った。



「…先輩。」



もう郡山葵だとか私だとか

そういった境界線はなかった


1人の女としての私がうっとりとした顔で先輩を望んでいた。




どれくらいの時間が経っただろうか

我を忘れて私達は互いの唇を求め合った



自然と先輩の手が私の胸に伸びてきた



思わず身体が反応してしまったが、

もう一度唇を奪われる頃には、私は彼に身体を許してしまっていた。




もうどうとでもなってしまえ……



奇しくも私の願いは見事に叶うこととなった。




思いもよらぬ形でその時を迎えた。


破瓜の痛みは想像を絶するものであった。

耐え難い苦痛を必死に顔に出すまいとしながら、私と重なる彼の顔を見て愛が募っていった。



先輩はとても優しく私を気遣っていた

耳元で囁かれる言葉が私の気持ちを増幅させた。




「ごめん…もう…」





彼が果てる姿まで愛おしく思えて堪らなかった






解散して帰る頃には下半身の痛みと包まれた愛情で

先輩が用意していた避妊具について深く考えることはしなかった。







次の日から私は、ユウキと距離を置くようになった。

それはどこか後ろめたさがあるような

それは先輩への不義理になるような


そんな思いが私の中で渦巻き続けていた。




私はこれまで通り、4人での時間を過ごした

一つ大人の道を辿った妙な感覚は時折日常生活に支障をきたすこともあったのだが


それまでの『郡山葵』の役回りでいることは

この4人の為に必要な気がして



「翠ちゃん料理うまいんだねー!!」



私はまた、私を偽って過ごした





彼の前で曝け出した私は

彼が知っていてくれればいい。






そんな普通の女子高生の恋愛が音を立てて崩れるのは

それからそう遠くない日のことだった。







遂に100部目!!



長かったぁ…


何年かけて続けてるんだと自問したくなるくらい

年月だけは長く続いているこの作品も遂に100部目に到達しました!


いやぁめでたい。


まさか100の節目のお話がここになろうとは思いもよりませんでした笑




もうちょっと感動的なシーンをここにぶつけたかった気持ちもありますが、

ひとまず100突破ということで

ここまで読んでいただきありがとうございます。




最近、ちょっとジャンルの違う作品を二つほど新しく書きはじめておりますので、

何かの興味に引っかかったら幸いです。




では また。

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