向日葵の咲き乱れる夏に⑥
何日か経ったある日
下駄箱で佇む郡山葵の姿があった。
いつもの明るい表情はなく
掴んだローファーを離すこともなくただただ下駄箱と向き合っていた。
ふと、私の気配に気づいたのか
我に帰って満面の笑顔を向けた
「ユウキ、おっはよー!」
私は何故だか心が苦しくなった。
正直、私はまだ彼女を信用したわけではない
むしろこれまでの人生での彼女を見てきていた私にとっては当然のことだろう。
ただ
今の私は、『友人』という立場で彼女の側にいる。
側にいるというとおこがましいが、
仲良くさせていただいている。
そんな彼女は何やら物思いにふけっている。
それも察するに良い方向ではないだろう
そんな彼女は、私に気づいた今
『郡山葵』という仮面を被った。
そう、私は頼りになる存在には見られていないのだ。そんな当たり前の事が
辛くなった。
8回目の人生
もう期待をしないと分かっていたのに
私はまた
同じ過ち を繰り返していたのか。
恥ずかしさと居たたまれなさから
私は挨拶を交わさずに教室に向かった。
教室に着いた時に
彼女の苦悶の表情の意味がわかった。
いつもマドンナの取り巻きの女子グループが
いつもの定位置でマドンナの登場を待っていない。
むしろ対角の位置とも言えるところにいた。
「ほんと、調子のってるよね」
「ね。」
会話を一部始終を聞くまでもなく状況を理解した。
ハルキストはバツの悪そうな顔で僕を迎えた
郡山葵のピラミッドが崩れ始めた。
いや、もう陥落しているのかもしれない。
それからすぐに郡山葵の到着と共に
クラスに静寂が訪れたのと対照的に、私の心は騒がしくなり始めていた。
そして翌日、彼女は孤立した。